月曜日の園児
はじめまして。
数ある作品の中から、本作を手に取っていただきありがとうございます。
この作品は、私が実際に見た夢をもとに執筆した「夢小説」シリーズです。
夢の内容そのものは可能な限り忠実に残しつつ、小説として読みやすくなるよう、情景描写や会話、構成を加えて再構成しています。
夢という性質上、場面や文脈が突然切り替わったり、説明のつかない違和感が現れたりします。それらはできるだけ「夢らしさ」として残していますので、現実とは少し異なる感覚も含めて楽しんでいただければ幸いです。
執筆にあたっては、文章表現や構成の推敲にAIの力を借りています。ただし、夢の内容や着想、物語の核となる出来事は、すべて私自身が体験した夢に基づいています。
読んでくださった皆さまが、少しでも夢の不思議さや、目覚めたあとに残る妙な感覚を共有していただけたなら、とても嬉しく思います。
感想やご意見も、お気軽にお寄せいただけると励みになります。
どうぞよろしくお願いいたします。
月曜日の園児たち
金曜日だった。
その日、私は会社の会議室にある大きなホワイトボードの前に立っていた。
そこには以前から書かれていた何かがあった。業務のメモだったか、今後の予定だったか、あるいは誰かが時間をかけて整理した内容だったのかもしれない。しかし私は深く考えず、それらを消し始めた。
黒いイレーサーが乾いた音を立てる。
消していくうちに、自分なりの構想が頭の中で形になっていった。
「こっちの方が分かりやすいだろう」
そう思いながら、新しい内容を書き始める。
だが、途中で時間が来た。
ホワイトボードには中途半端な図と未完成の文章が残されている。
続きは月曜日でいい。
そう考えて私は帰宅した。
夜。
なぜか私は居酒屋にいた。
一人だった。
案内されたのは広い座敷席だった。
妙だなと思いながらも座っていると、しばらくして大人数の団体客が入ってきた。
彼らは当然のように私の周囲へ座る。
誰も私に何も言わない。
だが、その空気は明らかにこう語っていた。
「あんただれ?」
私も思った。
自分でも分からない。
なぜここにいるのか。
なぜ同じ席に座っているのか。
しかし今さら立ち去るのも不自然だった。
私は適当に相槌を打ち、それらしい顔で会話に混ざった。
誰も私の正体を知らず、私も彼らを知らない。
それでも宴会は続いていった。
月曜日。
携帯電話の着信音で目が覚めた。
課長だった。
嫌な予感がした。
「今日ホワイトボード使うんだけど」
開口一番、課長はそう言った。
「どうするんですか」
胸の奥が冷たくなる。
「一度手を付けたなら最後までやりません?普通」
私は何も言えなかった。
「残業でもして終わらせればよかったでしょう」
さらに続く。
「それに、内容も前の方が良かったですよ」
頭の中で金曜日のホワイトボードが蘇る。
中途半端な図。
未完成の文章。
消された元の内容。
私は慌てて謝った。
今すぐ直さなければならない。
しかし、なぜか私は車に乗っていた。
どこかへ向かっている途中だった。
会社にはいない。
戻ることもできない。
焦りだけが膨らんでいく。
せめて着いたらすぐ修正できるように。
私は車内で資料を整理し、構成を考え、段取りを組み立て始めた。
だが時間は過ぎていく。
午後だったのか、夕方だったのか。
ようやく会社に到着した。
私は急いで建物へ入った。
だが、そこで目にした光景に足が止まった。
園児たちだった。
たくさんの園児がいた。
赤い帽子。
黄色い帽子。
小さなリュック。
楽しそうな声。
会議室の前にも園児が集まっている。
そして部屋の中には色紙で作られた工作や、おもちゃのような作品が並べられていた。
私は呆然とする。
課長が言った。
「今日の説明に使うんですよ」
説明。
園児への。
ホワイトボードはそのために使われるらしい。
私は立ち尽くした。
自分が書こうとしていた内容を思い返す。
園児向けではない。
そもそも誰向けなのかすら考えていなかった。
何を書くべきなのか。
誰に見せるべきなのか。
いつ使う予定だったのか。
何も確認していなかった。
私はホワイトボードを見つめた。
白い面がこちらを見返しているようだった。
最初に聞くべきだったのだ。
何を書くのか。
誰が使うのか。
いつ使うのか。
要件を確認するべきだった。
私はその当たり前の事実を噛みしめながら――
目を覚ました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は、私が実際に見た夢をもとにしています。
元々、私は仕事でコンサルティングに携わっており、締め切りに追われるプレッシャーを感じていた時期に見た夢です。
目が覚めた直後に最も強く残っていたのは、「課長に怒られたこと」でも、「園児がいたこと」でもありませんでした。
「何を書くのかより先に、何を求められていたのかを確認するべきだった。」
そんな当たり前のことを、夢の中で痛感したことでした。
夢には現実ではあり得ない展開が数多くあります。それでも、不思議と現実以上に本質を突きつけられることがあります。
善意で始めたことでも、目的や相手を理解していなければ、努力は空回りしてしまう。
そんな感覚が、この夢には残っていました。
夢だからこそ生まれた不条理な物語ですが、読んでくださった皆さまにも、何か一つでも心に残るものがあれば幸いです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




