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07

「ヴィムクティ・ヴェーダ(完全なる真理の解放)」


 リオナの魔法式とは異なる、五芒星の魔法陣が壁に浮かび上がる。アイレはリオナを抱きかかえたまま、その魔法陣めがけて勢いよく飛び込んだ。


 壁をすり抜ける感覚と共に、牢のなかの不快なにおいから外の少し湿った空気のにおいに変わる。


 意地の悪い笑みを浮かべてリオナを見たが、リオナはすんとしていた。初見でこれをやると大概騒ぐものだが、リオナは眉ひとつ動かしていない。


「つっまんねえの。壁抜けの感覚、知ってた?」


「……知るわけがない」


 ワンテンポ遅れて、リオナが言った。瞬きの数が多い。それに、やや声が小さい気がして、アイレはにやりと笑った。


「やっぱビビってんの。かぁわいい」


 揶揄うように言ってやると、リオナのしっぽがアイレの太ももにバチンと勢いよく当たった。無言の抗議だ。アイレは宙に浮いたまま、嫌がらせでリオナを横抱きにしてやった。


「おいっ?!」


 小声だが、確実にどすのきいた声でリオナが吠える。アイレはにいっと笑ってリオナを覗き込み、ペロリと舌を覗かせた。


「新月の夜ならこのままアカサまでひとっとびできるけど、満月の夜にはちょっと俺の魔法の精度が下がるんだなあ。

 とりあえず、王都を出てちょっと離れた未開地域に下りるから……舌噛むなよっと」


 アイレはわざとらしく言って、とんと空を蹴った。


 空中に風の足場をいくつも作り、それを踏み台にして移動する。


 一人なら余裕で特大ジャンプを決めながら軽々と跳んでいくが、さすがにこの王様にその感覚を味わわせたら、あとからぐちぐちと文句を言われそうだ。


 あっという間に王都を離れる。


 リオナは意外にも素直だ。舌を噛まないようにしゃべらないのか、それともこんな方法で移動するとは思いもよらなかったのか、終始静かだった。

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