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目を覚ますと、見慣れない景色が広がっていた。夢でも見ているんだ。
見通しのいい水辺が目の前に広がり、私は湖畔のギリギリに膝をついていた。近くには木々が生い茂っている。
視線を下ろすと、私はやけにぼろぼろな服を着ていた。薄茶色に色ずんだ一枚着は、つぎはぎすらほどけて地肌が見えてしまっている。
変な夢だな。だけど、なかなか自由に体を動かせる。これってなんだっけ。白昼夢じゃなくて……とにかく、夢の中で体を動かせるやつだ。
一度立ち上がってみる。体が軽い。あれだけ働いて疲労困憊だったはずの体が嘘みたいに軽い。若干足の疲れが残っている気もするけれど、当社比で見れば段違いになっている。
こんなに体が楽ならこっちで生きてみたいな。
不可能なことが頭をよぎる。ついに私は夢の中に居場所を求めるようになったのか。これはちょっと現実に希望がなさすぎるか。
視界の端で水面が少し動いたのが見えた。魚でもいるのかな。ちょっと気になったのでのぞき込んでみる。
少し揺れ動く池には、特に何もなかった。しかし、それ以上におかしなものが映っていた。
知らない少女の顔が、水面にあった。
あまりの驚きに体がのけぞって、尻もちをついた。後ろに誰かいるのかと思ったが、違う。映ったのは少女の顔だけだ。
それに不可解なのは、私の顔が映っていなかったことだ。何とか適切に処理しようとしても、意味不明な出来事に脳がパンクしてしまいそうになる。
しばらく考えたが、きっと私の脳みそじゃわからないので、もう一度水面をのぞき込んだ。
さっきの少女の顔だ。
まさかと思って、頬をつまんでみる。
水面の少女は頬をつまんでいる。
前髪を触ってみる。
水面の少女は前髪を触っている。
間違いなく、ここに映っているのは私だった。夢を見て、こんな状況になったのは初めてだった。見覚えない少女に顔が変わってしまうなんて、いったい何が起こっているのだろう。
しかし、なかなかかわいい顔をしてるかもしれない。
現実世界では重いまぶたの私だけれど、今日の夢の中ではあどけなさを残す純粋美麗な少女だ。
ちょっと服がボロいことを除けば結構あり、かも。
体も自由に動いて、現実より若くなった気分。1秒でも長くここにいたいと思えた。夢だけど覚めないでほしい。
ぐんと背伸びをしてみる。
すがすがしい風がゆったり髪の間をすり抜けた。いい夢だ。
やることもないので池の反対側へと歩いてみる。表情は何時の間にか笑顔になる。ここ数ヶ月感じていなかった幸せな感情だ。
すると、目の前から数人の男が走ってきた。1人は馬車を引いている。これはもしかして、白馬に乗った王子様?




