エピローグ〜真っ二つがお望みでしたか?byへいくわい者〜
「ヘイ、カモン!とりあえず有能で裏切らない部下!」
暗い地下室にそぐわない不自然に明るい声が響く。
まだあどけなさを残す少年ともいえそうな男が広げた手の下には、いかにも不気味な紋章が広がっている。
と、紋章が光り輝き、目も眩むような強烈な光が部屋を満たした。
思わず目を瞑った男の耳に、くぐもった声が届いた。
「…ぅ、ぐっ、?」
うめき声に目を開ければ、恐ろしく冷たい、そう、例えるならば磨き上げられた抜き身の刀のような男が、なぜだか眩い光に身体を包まれ、両腕を背中に回す形で縛られ、紋章の中心に叩きつけられるように。
不自然に身体を歪めて床に転がっていた。
「ええ…?」
思っていたのと違う!と叫ぶかわりに困惑の声を漏らした少年は、改めて目の前の男と向き合う。
縛られたまま、器用にも座した男もまた、冷たい光をたたえた黒の瞳を静かに細め、静かに眼前の少年を見返す。
奇妙な沈黙が部屋に流れる。
互いに相手を値踏みするように見つめ合う。
薄暗く埃舞う、光源と言えば粗末な魔灯だけの。
地下室で。
(…気まずいっ!)
先に沈黙を破ろうとしたのは、この現況を作り出した男―名を、サミュエル·ベルフォスト·アイゼア。
後の世に、恐惶だの魔帝だの、史上最悪の暴君だのと散々な言われようをされる男だ。
そして、まだ若く、そこまでひどい言われようではなかった頃の、というかまだ即位すらしていない彼が召喚した目の前の男、名を石田三成。
言わずもがな欠点が才能を上回った結果、今まさに首を落とされる寸前までいった男である。
なぜこんな破れかぶれの二人組が狭い上に暗い地下室で奇妙な沈黙を維持しているのか。
気まずさと、射すくめるような鋭い視線に耐えかねて、サミュエルは記憶を過去に飛ばし、こうなった経緯を思い返す事にした。




