第5話:空飛ぶ鹿スカイディア狩り
夜明け前、村の広場に猟師たちが集まっていた。
今日は共同狩猟――標的は、翼を持ち雲間を駆ける幻の獲物スカイディアだ。
「あれは地上からじゃまず仕留められない。奴が草を食む降下の瞬間が勝負だ」
「翼を傷つけすぎるな。肉が落ちる」
異世界の猟師たちが口々に注意点を告げる。
東出は頷きながら、万能狩猟道具を大型の弓に変えた。
弦を引き、引き心地を確かめる。
狙うは心臓――最も苦しませず、一撃で仕留められる場所だ。
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雲間の影
谷の上空に白い影が現れた。
大きな翼をゆっくりと羽ばたかせ、朝の霧を切り裂く。
「来たぞ……!」
猟師たちが一斉に弓を構える。
だがスカイディアは敏感で、気配を感じるや一気に高度を上げた。
東出は弦を引いたまま動かない。
息を整え、地上に降りる瞬間を待つ。
――そしてその瞬間が来た。
草を食もうと降下してきたスカイディアの翼が地面すれすれになった刹那、
東出の矢が空を裂く。
鋭い音と共に矢は胸を貫き、スカイディアは地面に静かに崩れ落ちた。
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解体と料理
村に戻ると、焚き火を囲んで解体が始まった。
スカイディアの肉は鹿に似た赤身だが、脂に甘い香りがある。
東出は背肉とロースを切り分け、香草と岩塩だけで味付けし、神から授かった炎属性の調理石板に載せる。
脂がじゅわっと溶け、香りが夜空へ広がる。
村人や猟師たちが集まり、皆で肉を分け合う。
「……柔らかいな」
「空を飛んでたとは思えんほど、旨みが濃い」
東出は黙って頷き、焚き火越しに杯を受け取った。
「命に感謝して食べる。それだけは、この世界でも同じだな」
夜空には、次の獲物を予感させる月が昇っていた。