第3話:神への初献上
三日目の朝、東出昌大は夜明けと共に目を覚ました。
焚き火の灰を掘り返し、まだ赤く燻る炭を見つけると、笑みを浮かべる。
今日は神に、初めて本格的な料理を献上する日だ。
「神サマも、ちゃんと食事してるのかね……」
狙うは昨日仕留めた銀棘魚の残りと、荒野で採った香草、そして通販で取り寄せた少量の小麦粉。
万能狩猟道具を石臼に変え、香草をすり潰す。
鮮やかな緑の香りが朝の冷気に溶け込んだ。
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献上料理:銀棘魚の香草包み焼き
銀棘魚の切り身を香草ペーストで包み、さらに異世界産の巨大な葉でくるむ。
炭火の端でじっくりと焼き、葉が焦げた香りが立ち上る。
焼き上がった身はふっくらと白く、香草の緑が鮮やかに映える。
皿に盛り、ワインを添えて献上台の上に置く。
「さあ、どうだ」
瞬間、柔らかな光が降り、皿ごと消えた。
静寂。
風の音だけが流れる。
やがて、頭上からくぐもった笑い声が降ってくる。
「……うまい。思ったより、うまいな」
神の声は少し意外そうで、そして楽しげだった。
さらに光が降り、東出の手元に新しい道具が現れる。
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神の贈り物
それは、炎属性を帯びた調理石板。
炭火不要で常に均一な火力を保つ、不思議な調理器具だった。
「面白い。これで次は、もっと俺を唸らせろ」
声が消え、再び静寂が訪れる。
東出は石板を手に、口元を歪めて笑った。
「……こりゃ、また作り甲斐がある」
焚き火の煙と、神の笑み。
異世界での暮らしが、また一歩、濃くなった。