第33話:異形を喰らう ― 深淵の焚き火
戦いの終わり
雷鳴のごとき斧の一撃が最後の異形を両断した。
赤黒い霧となって溶けていく異形たち。
残されたのは、脈動する大地に散らばる“黒晶の欠片”と、肉とも鉱石ともつかぬ異形の素材。
東出はタバコを吹かしながらそれを拾い上げる。
「……まるで食材とは思えねぇな」
しかし狩人の眼は、どんなものにも“料理の可能性”を見出す。
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素材の加工
万能狩猟道具を調理器具に変え、素材を解体していく。
外殻は鋭い刃物のようで危険だが、内部にはゼラチン質の肉片が隠れていた。
それは深い海のクラゲを思わせる半透明の組織。
さらに赤黒く光る内臓部は、旨味の塊のような濃厚な匂いを放っていた。
「見た目はグロいが……酒の肴にはなるかもしれねぇ」
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焚き火と料理
焚き火を起こし、鉄鍋を据える。
まずは肉片を塩で軽く締め、香草を異世界通販から取り寄せる。
赤黒い内臓は刻んでソテーし、旨味を引き出す。
仕上げに、クラゲのような部分をとろ火で煮込み、スープ仕立てに。
異形素材のスープ――
見た目は奇怪だが、香りは濃厚な海鮮と獣肉の中間のようで、焚き火の周囲に芳香が漂う。
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狩人の至福
東出は盃に酒を注ぎ、タバコをくわえたまま一口すすった。
口の中に広がるのは、想像を超える旨味。
「……ん。時間を置いて――」
ゆっくりと味を噛み締め、数秒の沈黙のあと、口角を上げて言った。
「……うまい!」
焚き火の炎がゆらめき、狩人の笑みを赤く染める。
異形の恐怖を超え、深淵の食材をも“肴”に変えた瞬間だった。




