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第28話:黒樹の迷宮 ― 精神の試練

黒樹の迷宮の奥、光苔に照らされた空間に、静寂だけが漂っていた。

東出は足を止める。そこには扉も敵もいない――ただ、深い闇だけ。


タバコをくわえた瞬間、その煙の中から“過去の影”が形をとった。


山での記憶


猟師として過ごした山の日々。

共に猟をした仲間、焚き火を囲んで笑った夜。

しかし、それは次第に歪んでいき――仲間の顔が血に塗れ、冷たい瞳で彼を見つめる。


「……置いていったのは、お前だ」


幻影の声が、心を抉る。

現実でも、彼は多くを置き去りにしてきた。

山、仲間、そして人としての暮らし。


恐怖の顕現


さらに影は変化し、巨大な“黒狼”の姿を取る。

それは東出が山で遭遇し、唯一「逃げるしかなかった」存在の象徴だった。


牙をむき、迫る狼。

足が一瞬すくむ――本能が恐怖を呼び覚ます。


だが、東出は深く煙を吸い込んだ。


東出の答え


「……あの時の俺は弱かった。

でも今は違う。神が俺をここに置いていったのは、逃げた自分を狩るためだろ」


万能狩猟道具を弓へと変化させる。

矢をつがえ、焚き火の残り火で赤く燃やした。


幻影の狼が襲いかかる瞬間、東出は一歩も引かず矢を放つ。

光の矢は幻影を貫き、狼は煙のように散った。


試練の突破


幻影が消えた空間に、石板が浮かび上がる。

そこには神の文字が刻まれていた。


『恐怖を越えし者にのみ、さらなる道を与えよう』


扉が開き、迷宮のさらに深い階層が顔をのぞかせる。

東出は酒瓶を取り出し、ぐいっと一口あおった。


「……恐怖も肴にすりゃ、案外うまいもんだ」


そう言って、煙を吐き出す。

その煙は、新たな冒険の狼煙のように、迷宮の闇へと溶けていった。

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