第25話:黒樹の迷宮 ― 闇の入口
ジャングルの奥深く、石板の光が収まると同時に、地面が裂けるようにして巨大な階段が現れた。
下へ下へと続くその階段は、冷たい風を吹き上げており、まるで迷宮そのものが呼吸をしているかのようだった。
村人や猟師たちは恐怖に駆られ、誰も近づこうとしない。
だが、東出は焚き火の残りから一本の枝を拾い、火を灯すとそのまま松明代わりに掲げた。
「……置いてきたんじゃない。呼ばれてるんだ、俺は」
タバコを口にくわえたまま、東出はゆっくりと階段を降りていく。
背後には誰もついてこない。孤独な冒険の幕開けだった。
黒樹の迷宮の内部
迷宮の中は圧倒的な静寂に包まれていた。
壁を覆うのは、闇色の蔦と、ところどころに光を放つ苔。
しかし、光のない空間では人影すらも怪物のように映り、常に何かに見られている気配があった。
やがて、通路の奥から――「カサ…カサ…」と不気味な音が響く。
現れたのは、巨大な昆虫のような魔物「シャドウ・マンティス」。
透明な羽音と共に、漆黒の鎌が月光のようにきらめいた。
神の囁き
その瞬間、頭の中に再び声が響く。
『迷宮を踏破せし者のみ、新たな世界への門を開ける……。
汝に問う。力か、知恵か、犠牲か――。』
声は曖昧に問いかけるだけで、答えを教えてはくれない。
東出は肩をすくめ、口から煙を吐き出した。
「選択肢なんて、飯を食うときくらいで十分だろ……」
そう呟きながら、戦闘の構えをとる。
迷宮探索の幕が、ついに切って落とされた。




