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第19話:深淵の門
再び潜った海底都市。
中心の祭壇には円環状の石板が並び、その紋様は淡く光を帯びていた。
東出昌大は槍を手に、その前に立つ。
背後には漁師たちの祈りの声が水に響いていた。
儀式の始まり
万能狩猟道具を短剣に変え、東出は指先をかすめる程度に切った。
血の雫が石板に落ちると、都市全体が低く唸るように震え出す。
青い光が走り、石板の紋様がつながり――やがて中心に巨大な渦が現れた。
「……これが“深淵の門”か」
顕現
渦の中から、巨大な影が浮かび上がる。
幾本もの触腕、甲殻の鎧、赤く光る無数の目。
それは伝承で語られる海の魔――深淵のクラーケン。
海底都市の柱が揺れ、魚群が一斉に逃げ去る。
圧倒的な存在感に、漁師たちの心臓の鼓動が水音のように速くなった。
狩人の構え
東出は一度タバコを口に咥えたつもりで空を噛み、すぐに吐息を泡に変えた。
心を静め、槍を構える。
「さて……こいつはどう料理してやろうか」
深淵の門が開き、異海域の王が顕現する。
海と都市、狩人と怪物――そのすべてを呑み込む戦いが、今まさに始まろうとしていた。




