第17話:霧海の亡霊船
海面を覆う濃い霧の中、船はゆっくりと進んでいた。
波音も掻き消すような静寂。
漁師たちは口を閉ざし、ただ水の音に耳を澄ませている。
その時、霧の奥から軋むような音が響いた。
視界の先に、黒い影――朽ち果てた漂流船が現れた。
廃船の探索
東出昌大は万能狩猟道具を灯火に変え、漁師たちと小舟で近づく。
船体は半ば沈み、甲板は苔と海藻に覆われていた。
だが船の木材は異様に硬く、何百年も前のものとは思えない。
船内には崩れた樽と、錆びついた武具。
そして壁には、不思議な紋様が刻まれていた――
まるで地図の一部のような、螺旋を描く模様。
「……文明の痕跡、か」
失われた航路
東出が紋様を指でなぞると、淡い光が走った。
次の瞬間、頭の中に映像が流れ込む。
古の航路、海底都市、そして巨大な石柱に囲まれた祭壇。
漁師たちは息を呑み、東出は煙草をくゆらせながら低く呟く。
「なるほど……神サマ、次はこれを見せたいわけか」
焚き火の小休止
船に戻ると、甲板に焚き火が焚かれた。
東出はレヴィアタンの干し肉を炙り、海藻酒で流し込む。
夜空は見えず、霧の中に炎だけが揺らめいている。
一口食べ、しばし沈黙。
波音を聞きながら、間を置いて笑った。
「……うまい!」
漁師たちも笑い、緊張が少しずつ解けていった。
だが東出の胸には、海底に眠る文明への興味と、神の次なる意図への疑念が残っていた。




