第9話:白影狼王
吹雪の切れ間、月明かりが氷原を照らす。
その中を、白い影が音もなく滑るように近づいてくる。
雪の上に映る輪郭は、狼――しかし常の狼よりもはるかに大きく、しなやかな筋肉が毛皮の下で波打っている。
「……来たな、白影狼王」
狼王の黄金の瞳が焚き火を捉える。
その背後には、群れの狼たちが半円を描いて包囲していた。
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狩人の集中
東出は焚き火を蹴り倒し、暗闇を広げる。
万能狩猟道具を長槍に変え、槍先にわずかに魔力を流し込む。
白影狼王が動いた瞬間――東出の意識はすべてその動きに集中した。
狼王の踏み込み、雪煙の立ち方、呼吸の間隔――すべてが見える。
東出は一歩踏み込み、心臓の位置に槍を突き入れた。
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一瞬の沈黙
金属が骨を裂く鈍い音。
狼王が低く唸り、血の匂いが氷原に漂う。
周囲の群れが一瞬怯み、距離を取る。
「……済まんな」
東出は静かに槍を引き抜き、狼王の首筋へ短く鋭い一突きを加える。
長くは苦しませない――それが彼の流儀だった。
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戦利と祈り
狼王の巨体が雪に沈むと、群れは闇の中へ消えていった。
東出はその場で膝をつき、目を閉じる。
「いただきます」
氷原の空には、月がひときわ明るく輝いていた。
その光の中、神の声が微かに響く。
「……見事だ。だが、まだこの世界はお前にすべてを見せていない」
東出は肩で息をしながら、血に濡れた槍を雪で拭った。
そしてゆっくりと立ち上がる。




