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#2 一人部屋、二匹暮らし

「ふう……準備は終わったか…」


魔道具、衣類、愛読の魔法書。必要なものをひと通り、収納魔法と軽量化魔法が施されたバッグへ詰め込んだセルティは、大きく息を吐いた。

あとは馬車の到着を待つばかり――のはずだった。


「レギナ、準備はできた?」


「もうちょっとだけ食べたいかな〜。どうせなら聖都の串焼きとか食べてみたいよね!」


(……ほんと、今日も今日とて食い意地張ってるな)


セルティは呆れつつも口元を緩める。こいつの食費だけで、すでに財布が悲鳴を上げている気がする。


やがて、外から蹄の音が近づいてきた。


馬車だ。


慌てて外へ出ると、少し白髪混じりの髭を蓄えた御者が、手綱を握ったまま微笑んでいた。


「すみません、待たせてしまって!」


「とんでもありません。円卓の一人をこの馬車にお乗せできるとは、私にとっても光栄の至りです。どうぞお乗りください。荷物はこちらでお運びします」


その丁寧すぎる物腰に、セルティもレギナも思わず顔を見合わせる。


(あの不気味な男の従者が、こんなにまともな人だったとは……)


――そして、二人同時に同じことを思った。


馬車は静かに揺れながら、街道を走る。


30分ほど経ったころ。セルティは小さくあくびをかみ殺しながら、窓の外をぼんやり眺めていた。

レギナはというと、膝の上で丸くなりながら、どこか暇そうに尻尾を揺らしている。


のどかな風景。静かな時間。


……だが、その静けさは突然、打ち破られることとなる。


突然、馬が悲鳴を上げるように嘶き、前脚から崩れ落ちた。車輪が大きく傾ぎ、馬車がぎしりと不吉な音を立てる

セルティは御者さんに状況を聞こうと窓から身を乗り出す


「御者さん!何が――っ!」



セルティは身を乗り出し、運転台の御者に声をかける。


「いえ……わかりません。ですが、急に馬が……!」


見れば、馬の前脚には、鋭利な刃物で斬られたような裂傷が走っていた。


「なるほど……レギナ! 起きて!」


「なにさもう……あと十分は寝れると思ったのにぃ……」


「そんな暇ない! すぐ探知魔法を! 私は魔道具の準備に入る!」


「……人使いの荒いご主人…いや、猫使いかな?」


文句を垂れながらも、レギナは結界を展開。空間に波紋のような魔力のゆらぎが広がる。


「これは……ゴースト系だね。しかもだいぶ手強い…にじみ出る魔力量も普通とはちがうね…日中は不可視だけど、魔力の反応はしっかりある。きっと、あの馬をやったのも……」


「じゃあ、ゴースト知覚の魔法をお願い! 私には感知できないから!」


「はいはい、魔法使えないご主人のために、せっせと働きますよっと」


すぐさま展開される視界共有型知覚魔法。その効果範囲内に、ぼんやりと歪む五つの影が浮かび上がる。


「五体確認。来るよ、セルティ!」


「了解! 私は応戦に回るから、レギナは馬車を守って!」


「任された!」


レギナの足元から展開された多重結界。十層以上に重なるそれは、並の攻撃なら容易く防ぐだろう。


(さすがは上位精霊……ほんと、魔法使えるの羨ましいな……って、今はそれどころじゃない!)


セルティは腰のバッグから魔道具を抜き、次々に起動していく。


魔道具――それは、魔法の適性を持たぬ者にも力を授ける、魔法兵器


魔法を使えぬセルティが円卓第三席を張れるのは、桁外れの魔力量と、魔道具という“代替魔術”を極めているからに他ならない。


「炎系統――《蒼炎インフェルノ》!」


少女の声に呼応するように、前方の空間が一気に蒼く燃え上がる。

続けざま、反対の手の魔道具が輝く。


「氷系統――《氷槍アイシクルランス》!」


その瞬間、蒼炎の縁を沿って、無数の氷槍が敵影めがけて放たれる。

物理無効のゴーストに対しても、魔道具の魔力が媒介すれば攻撃は成立する。


爆発する氷と炎。

宙に跳ねる魔力の断片。

戦場は一気に氷と炎に染まった。


「ふひゅ~……さっすが我がご主人、威力だけは天下一品って感じ?」


一瞬の静寂――戦いが終わったかに見えたその刹那。


「セルティ、右! 危ない!」


レギナの叫びと同時に、セルティの右脇に結界が展開される。

残党の一体がそこに飛びかかっていた。

レギナの結界によってたちまちゴーストは浄化された


「……ふう、助かったよレギナ」


「ふへへっ。助けたんだからさ、ご褒美に聖都で串焼き買ってくれよな!」


「はいはい……財布のほうが危ないかも……」


苦笑しながらセルティは馬車へ駆け戻る。


「御者さん! ご無事ですか?」


「は、はい……! いやはや、まさか円卓の御方の戦闘をこの目で拝見できるとは……しかし、馬がこの通りでは、再出発は難しいかと……」


「大丈夫です。馬の治療はレギナが終えていますし、馬車の修復も私が行いますから」


「な、なんと……! そこまでしていただけるとは……!」


「いえ……ただの魔道具ですから。こういうときこそ、使ってやらないと」


再び蒼い光が宿る魔道具が輝き、馬車の車輪と骨組みがみるみる修復されていく。

こうして、馬も車輪も再び走れる状態に戻った。


セルティとレギナを乗せた馬車は、再び聖都への道を進み始めた――。



ゴーストを退治して間もない時に御者さんが声をかけてきた


「貴方様の使い魔…レギナ様と言ったでしょうか?なぜ、それほど卓越した魔法の腕をお持ちなので?」


この質問でレギナが何者かが明かされる


「ああ…レギナは精霊なんです。昔むかし、私がひとりぼっちだったころ、よく一緒に遊んでた白い子猫…それがある日を境に急に喋りだしたかと思えば…」


「僕がめちゃくちゃに急かして使い魔の契約をさせたんだ!それでレギナって名前を名乗った!こう見えて僕は上級精霊なんだ!」


「なんと…!上級精霊ですか!?」


―上級精霊は120年前の大戦で、人類に手を貸した精霊たちのことだ。彼らの力がなければ何人の命が無くなっていたか分からないというほどに…


「私もよく分かりませんけど…寝てる時は可愛いですよ。生意気言わないですしふわふわなので…」

というが、レギナは何も反応しない


(いつもなら『きーっ!』て引っ掻いてくるだろうに…)


そう思いながらレギナを撫でる

(ありがと…レギナ)

少しだけ、笑みがこぼれた


(あ…ねてる…まあ、ゴーストが急に現れて戦ったんだし疲れるよね…私もちょっと眠い…)





「――様!第―席様!第三席様!…起きましたか?着きましたよ、聖都学園の寮です」


「あわわ…寝ちゃってましたか私…」


「はい!2時間ほどぐっすりと…寮母にはアンブラシア様がもう話をつけているそうなので、この札を持って入ってくださいね」


「ありがとうございます!」


「いえいえ、今日助けられたことは一生忘れません!また近いうちお礼の品をお送りします!」


そういうと、また魔物に襲われないようにと足早に馬を走らせ御者さんは帰って行った

あと最後に渡された札と一緒に手紙が着いていた

開いてみると『アンブラシア』と不吉な名が書かれていた

読んでみると


「やあ、セルティ殿。お元気ですか?まあ、セルティ殿であれば、ご無事に着いていることだろうと思います…寮に着きましたら、寮母から制服を受け取ってください。あとこれは極秘任務なので、たとえ王子にもバレては行けませんよ。もしバレたとなったらすぐに私の方へ連絡を…そうすれば対処はできますのでね。では、良い学園生活を…」


という事だった


(最後の良い学園生活を…なんか凄い嫌味のように聞こえてしまう)


セルティは円卓になるとき、学園などにいかず、その地位に着いた。

つまるところ、彼女に学園生活の経験は無いのだ!



「あ…寮母さん!新しく入るセルティ=ユーグレッドです!」


「ああ…あなたがセルティさんね!これがこの学園の制服だから渡しとくわね!あと困ったことがあったら私のところに来てね。お風呂とかトイレはそこにあるから!」


「あ、ありがとうございます!」


そして札に書かれた部屋へと向かう

部屋は狭くもなければ広くもない

だが、前まで住んでいたセルティの家に比べれば幾分かマシだろう…清潔感という点で…


「おーう!前の家より綺麗だ!」

レギナははしゃぎながらベットに飛び込んだ

「こら!レギナ!せめて体を洗ってからお布団に入りなさい!」


「ええ…」

レギナはお前が言える立場なのか…?と困惑した様子でセルティを見つめた


「全くもう…」


こうして、セルティとレギナは無事学園寮に着いた

明日からは学園での生活が始まる

王子の護衛に、暗殺勢力の特定…

骨の折れる仕事だが、やり遂げなければならない

何故ならばセルティ=ユーグレッドは『円卓』なのだから。


(一人部屋で私とレギナ…これじゃ、一人部屋、二匹暮らしだよぅ…)

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