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夢中の館  作者: 秋絽
6/19

6:倉庫(2)

 日記を読んで思ったけど、オカルトで治る病気?もあるのか。日記ではバクの皮が入ったお守りで症状が治っていた。


「バクってあれだよね・・・悪い夢を食べてくれる伝説の生き物だよね」


 お守りのおかげで変な夢が食べられて治った・・・ってことだろうか。本当にバクという伝説の生物がいたんだ。今はもう伝説の生物として扱われているし、とっくに絶滅しているかもしれないけど。とにかく、興味深い話を読んだ。


「私もそういうお守り欲しいな。例えば、ここから脱出できるお守りとか。」


 いや、そんなのあるわけないでしょ。という言葉が脳裏を通ったが、頭を振って霧散させた。ほかにも紙束があったので目を通してみたが、参考文献なのか分からないけど論文だらけだった。一応読んでみたは良いものの、高校生になったばかりの私の知識では何も分からなかった。

 館で目を覚ましてから化け物以外に誰にも会っていないし、分からないことを聞ける人がいない。いつもならインターネットで調べたり、親に聞いたりできるが今はそういうこともできない。”孤独”、その2文字が脳裏に浮かぶと、急に家族や友達が恋しくなってくる。せめて話し相手が欲しい。


「誰か会えないかな・・・」


 薄暗い館の中、化け物から逃げて探索している私を褒めてほしい。そんな思いを胸に、つぶやく。この倉庫には誰もいないし、分からないものは聞けないから別の段ボール箱を調べる。棚の横にあった箱を自分の方に寄せて開ける。開けると、乾パンや缶詰、水が入ったペットボトルなどが入っていた。


「非常食かな?」


 そういえば目覚めてからというもの、色々あったがお腹はすいていない。体感では半日くらいだけど、意外とそんなに経っていないのかな。

 とにかく、食料を見つけられたのは良いことだ。お腹がすいたときに、食べられるように乾パンをポケットにしまう。のどが渇いたとき用のペットボトルは手に持つことにしよう。手持ちが潤ったのか、はたまた食という娯楽を楽しむことができるようになったのか分からないが、少し元気になる。

 棚の横にはまだ段ボール箱があるので、また自分の方に寄せる。寄せたとき・・・ふと気づいたことがある。この棚、床と棚板の高さがやけに高い、大きい段ボール箱でもあるんだろうか。ランプから出る光が手前の段ボールに遮られてよく見えない。


「確認・・・してみようかな」


 嫌な予感がする。ランプがある今、あたりが照らされているが、段ボール箱を壁として向こう側の暗闇が余計目立つ。だけど、そのことには後でも気づくだろうし、棚の近くの箱を移動させたら見えるだろうから、このまま気になって探索するよりも、早く解決した方が良いに決まってる。

 ランプを持って、さっき自分の方に寄せた段ボール箱を乗り越え、棚に近づく。すると、何か白いものが見えた。なんだろうか。ランプを床に置いて恐る恐るのぞいてみる。覗くと、しっかりとした、しかし病的なまでに肌白い、明らかに死体と本能が感じる”手”が見えた。


「ヒィッ・・・」


 反射的に離れようとするが腰を抜かしてしまって動けない。初めて見る死体に本能的な恐怖を感じる。自分もこうなってしまうんだろうか。呼吸が荒くなって逆に息苦しくなる。なんでここに死体が・・・。化け物にやられたのか?・・・動けない焦りと恐怖で思考がまとまらない。やばい、汗がすごい。涙も止まらない。


「なんでこんなところに死体が・・・誰か助けてよぉ!」


 思わず口を押える。化け物は音に反応するんだから、叫び声が外に漏れたらここにやってくる、それは嫌だ。こんなところに化け物がやってきたらそれこそ終わりな気がする。想像しただけで身がすくむ。その時力んだのか、パンツとズボンが生温かくなって不快さが増してくる。

 ・・・叫んだことによるストレスの発散と、体が汗の蒸発によって冷め、少し我慢していたものが漏れたことで少し思考がまとまってくる。そもそも誰かいるわけがない。もしいるならどこかで見かけてるはず。


 スゥ・・・ハァ・・・そんなこんな考えていたが、落ち着くために深呼吸をし、袖で涙を拭く。お腹は減っていないが、非常食が入っていた箱に移動し、乾パンを取り出して口にする。乾パンを食べると口が乾いたため箱に入っていた飲料水も飲む。んっんっんっ・・・ァアああ。ストレスからか、水を多く飲んで声が出る。

 深呼吸と食事をしたことによって落ち着いた。


「ウッ、なぜか股下の不快感がすごい」


 誰かいるわけでもないのに、あたりをキョロキョロ見渡して誰もいないことを確認し、下を見る。


「やばい、めっちゃ濡れてる・・・」


 小学生以来漏らしたことなんてなかったため、何とも言えない気持ちで泣けてくる。濡れたズボンが太ももに張り付いて、想像以上に気持ち悪い。誰もいないことは確認済みなので、ズボンとパンツを脱ぐ。


「分かってたけど太ももまで濡れてるなぁ・・・」


 今すぐにでもこの不快感から解放されたい。冷静になった頭でもそのことでいっぱいだった。拭くものは・・・いや無理だ、濡れているのが気持ち悪いし、股下がスースーする。探しちゃいられない。今身につけているもので水分を拭きとれるくらい乾いているものはシャツとパジャマだけだ。


「仕方ない・・・仕方ないんだ」


 シャツで拭くのは嫌なので、パジャマで濡れている肌を拭く。拭いたは良いものの、今の姿はシャツ一枚と恥ずかしい恰好になっている。


「何か服ないかな、非常食があるんだし何か非常用の服とかないかな」


 非常用の服ってなんだ。自分で言ってておかしく思う。でも、ここは倉庫なんだし探せば服があるかもしれない。死体については、一旦置いといて服を探す。


「どこだぁ、服はどこだぁ」


 そうこう探していると、30分くらいたっただろうか。


「あった!」


 多くの段ボール箱を開き続けて30分、やっと見つかった。見つけた服は長袖の紺色や白のブラウスとカッターシャツ、黒色のズボン、紺色のスカートと黒色のタイツ、前掛け、ベルトがある。この館の使用人たちの仕事着・・・だろうか?なんにせよ、着る服が見つかって良かった。でも、一つだけ必要なものが見つかっていない。


「でも下着が見つからない・・・」


 いやまだだ、この段ボール箱の奥に着替えとして下着とかあるかもしれない。その可能性に賭けて、箱の底が見えるまで服を丁寧に出していった。・・・いかに倉庫と言えども、仕事着は見つかっても、下着類は見つからなかった。


「え、待って。これからノーパンで探索しなきゃいけないの?」


 さすがにノーパンで動き回るのは嫌すぎる。この館には誰もいないとしても、下着をはいていない違和感で探索とかに集中できない。


「・・・背に腹は代えられないぃ」


 下着がないことに不満はあるが、正直シャツ一枚の今の私の格好の方がノーパンよりも恥ずかしすぎるので服を着る。服装としては紺色のブラウスに紺色のスカートにした。ズボンの方が動きやすそうだったが、生地が柔らかいスカートにした。ズボンは生地が固くて下着がない今、不快感がすごそうだからはかなかった。

 着なかった仕事着は、服を探しているうちに見つけたリュックに詰めた。リュックは意外と容量が大きくて、非常食も入れることができた。濡れたパジャマやパンツは見つけたポリ袋に入れて、リュックの仕事着や非常食を入れているポケットとは別のポケットに入れた。


 倉庫を探索したおかげか、装備(下着以外)は結構潤ってきた。あと必要なのは情報だろう。落ち着いた今でも少し怖いが、死体を調べることにする。

 死体をあさるとか聞こえが悪いし、天罰が下りそうだが、死体ということは死ぬ前は生きた人間だということで、メモとかで何か知ったこと、感じたことを書き残しているかもしれない。あと使っていない下着とかあるかもしれない。死体を調べることのメリットがある。だから調べよう。

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