17:エッチなのはダメ!
「ありがとう!明里ちゃん!これがなかったら危うく詰むところだったよ」
「そのリュックの奥にあると思った。お姉さん、ガサツそうだもん」
「が、ガサツじゃないし」
大人な雰囲気があったけど、やっぱり明里ちゃんもおこちゃまだね。偏見が過ぎるよ。私、部屋とかきれいに・・・キレイ・・・キレイにしてるもん!
獏の皮をリュックの中のわかりやすいポケットに入れて、廊下に置いていた衣類や非常食などをしまった。
「そういえばこの服のほかに前掛けがあったと思うんだけど、知らない?」
「それなら応急処置の時に使ったよ。汚れちゃったから明里の袋に入れたけど」
「そうなんだ。そんなの持ってても不吉でしょ、お姉さんのリュックの中に入れるよ」
そういって、袋から取り出された血まみれの前掛けを受け取った。
受け取った後、一緒に先に進んだ。
あいつがいた廊下とは反対側に進んでみると、突き当りに出た。廊下は左に曲がって続いていたため、道なりに進んでみる。
進んでみるとそこは、照明がついているからか明るく、白を基調とした壁に、床には模様のある赤黒い絨毯が引かれていた。私たちがさっきまで歩いていた廊下とあまり変わっていなかった。ここの壁にも小さな絵画がところどころ飾られており、違いはないように感じる。
この廊下と逆方向の、あいつがいた廊下とは真逆の印象に、ほんの少しだけ困惑した。
「なんか、あの薄暗かった廊下を見た後だと明るくて逆に不気味だよね」
「そうかな、明里はそうは思わないけど」
思わないんだ・・・。前向きで良いね~。
廊下を進んでいくと突き当りに出た。今まで館を探索していたけれど、突き当りまで歩いて最後の最後で扉を一つしか見ないのは初めてだ。その最後に見つけられた扉は大きな両扉で、この廊下でその扉しか見つけられなかったということもあり先に何があるのか期待が膨らむ。
「廊下を歩いててこの扉しか見なかった。この先の部屋ってそれほど重要なのかな」
「どうだろ。でもこれしか見つけられなかったし、先に何かあるかも」
どうやら明里ちゃんもこの先に期待しているようだ。
目の前の両扉を押して開く。
さて、一体何があるのかな。
ーギ、、、ギギギィ・・・
両扉の扉を開くと、そこにはものすごく広く中央が吹き抜けになった暗い空間があった。
さっきまで明るいところにいたからか、その空間の奥が暗くて見えない。
廊下の明かりによって自分らの周囲はある程度見える。
「ここは・・・」
なんだろう、暗くてあんまり見えないけどここ、知っている気がする。
とりあえず、リュックからランプを出して明かりをつける。
むやみにここを歩くのはちょっと怖いので壁沿いに歩いていく。
「こんなに広そうな部屋って明里ちゃん入ったことある?」
「あるけど・・・でもエントランスホールって部屋っていうのかな」
明里ちゃんもこんなに広いところはエントランスホールしか知らないようだ。
そうして歩いていると、この部屋の角の一つにたどり着いた。そこには上へと続く階段があり、私の疑念が確信へと変わっていく。
明里ちゃんと一緒に2階へと上がり、記憶を頼りに進んで一つの扉を開けると、そこには明かりの灯った書斎があった。ランプの明かりを消して書斎に入る。
「やっぱあの広いところはエントランスホールだったね」
「なんでわかったの」
私はその質問に笑って見せた。
「私はここで目覚めたからだよ。あのときは怖かったな〜いきなり扉が開いt・・・」
「そうなんだね」
それほど興味もなさそうに、話に被せるようにそう言われた。くそう、あのときは本当に怖かったんだからな!
私が心に秘めた静かな怒りを静めた頃、明里ちゃんが物を動かして探索をしていたことに気がついた。
知らない部屋に行ったらとりあえず探索をするのはもはや病気かもしれない。私も含めて。
「ここには本以外何もないよ。私机の引き出しとか開けたけど何もなかったし」
「そうなんだ」
「・・・お姉さん。ちょっと手伝って」
明里ちゃんが本棚の側面の縁を掴んでそう言った。
本棚動かしてなんかあるのかな。もしや、秘密の部屋につながる階段とかあるのか。
その心躍る展開があるのか。ワクワクして明里ちゃんと、本棚を挟んで反対側につく。
「動かすんだね!」
「うん」
力を合わせて本棚を動かすと。
・・・何もなかった。秘密の部屋につながる階段も、扉も、何もなかった。
期待してやった分、がっかりした。
落胆して書斎をあとにしようとしたとき、
「あっ、えっ。おおお・・・」
「どうしたの明里ty」
振り返ってみると。
机の天板が上がっていた。
「えっえっ、なんでこうなってんの!?」
なんで天板が上がってるの・・・!?
「題名がない本があって、取ってみようとしたらこうなってた」
「そ、そうなんだ。ナイスすぎるよ明里ちゃん!」
「・・・そうでしょ」
明里ちゃんはエッヘン!とでも言うように腰に手を当てていた。だけど少しだけ顔が赤くなっていた。
私は明里ちゃんに近づいて、頭を思う存分撫でた。顔がさらに赤くなっていた。可愛いいいい!
思う存分撫で終わった後で、気になる机の方に向かった。
「さてさて、何があるかな」
期待を胸に膨らませ、天板の空いた机をのぞいてみる。
机には数枚の書類とお守り、高そうな腕時計や腕輪と・・・エロ本。
・・・!?エロ本!?
ものすごい速さで本を机の下に隠し、何事もなかったかのように机の前に立った。この時の隠すときの速さには、さすがのニンジャでもひっくり返るくらいには早かっただろう。
「どうしたのお姉さん、そんなに早くしゃがんだりして、なにか落ちてた?」
そう言って机の下を確認しようとする明里ちゃん。急にしゃがむから反応が追いつかない。
本が隠れるように足を置いてみるけど・・・どうだ。どうか気づかないで!
「・・・?お姉さん足の近くになにか本があるよ」
「わー!わー!」
明里ちゃんがその本を取る前に、即座にしゃがんでその本を取る。
「しゅしゅしゅ、収穫だね、うん!この本はお姉さんがきっちり大事に持っておくからね!安心してね!!!」
「お姉さん、なんか変だよ」
変なのはこんな隠しギミックにエロ本しまってるここの人だよ!私さすがに悪くないよ!
それに、明里ちゃんみたいな純真無垢そうな子にこんな本見せられないよ。こう言うのは大人になってからって、パパ言ってたもん。
そういやあの時のパパは凄い焦ってたな・・・多分今の私と同じ感じだったんだろう・・・。
焦燥と謎の熱に犯され、頭が真っ白だった私だが、その後少しの沈黙から立ち直して、天板の開いた机の前に立っていた。
「ふぅ・・・。明里ちゃん」
「なに」
「私は変じゃないよね」
「頼りにしてるけど。さっきは変だったよ、なにか明里から全力で隠そうとしてた」
「うっ。ま、まあ気を取り直して、机の上に何かないか探しますか」
「そうだね、お姉さんがそんなに必死になって隠そうとする物だもん。明里は気にしないで探すよ」
よしこれで万事解決。落ち着いて探索ができる。明里ちゃんも気にしないって言ってるし。私は明里ちゃんから見えないように持っているエロ本を、これまた見えないようにリュックにしまった。




