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3.天花舞う世界で見たものは③

「失礼。」


 ローウッドは咳払いを一つして、再びリーリエの方を向いた。ただし、片手でしっかりとアルフレドの首根っこを掴んではいるが。


「アルフレドの言い方は悪いが、確かになぜ君がたった一人であんな場所にいたのか、もう少し詳しく教えてはくれないか。」

「それは…」


 ローウッドはリーリエに対する疑念を気取られないよう柔和な笑みを浮かべる。その一方、アルフレドは訝る様子を隠すこともしない。リーリエは自分の境遇を誤魔化したりせずに、正直に伝えるべきだと思ったが、どう説明したらよいか考えあぐねていた。


「言えないようなことでもあんのかよ。」

「そういうわけではないのですが…信じていただけるかどうか…」


 アルフレドがリーリエへと鋭い眼差しを向ける。


「信じる信じないはこっちで決める。変な奴だったら燃やすぞ。」

「燃やす…!?」

「そう急かすものではないぞ。すまないね、国防を担う者として、我々には責任があるのだ。」


 リーリエはなぜ自分が凍てつく森でたった一人、魔獣に追われる事になった経緯を話し始めた。


「お二人とも、建国伝説はご存知ですか?」


 三人で硝子製のテーブルを囲むように席につくと、リーリエはそう話を切り出した。


「ただの昔話だろ。」

「知っているとも。それを聞いてくるということは…君は教会の関係者なのか?」


 ローウッドの言葉には、ほぼ確信めいた響きがあった。リーリエは頷くと言葉を続ける。


「…実は、私は聖樹なんです。」


「……」

「……」


 どこからどう見ても人間にしか見えない少女が、至極真面目な顔で自分のことを木などと言うものだから、ローウッドとアルフレドは自分の耳を疑った。そんな二人を置いて、リーリエは話を続ける。


「聖樹が意思をもって顕現したものであり、人間ではない…というのが教会の神官達の考えなのです。」



 おおよそ千年前、一人の青年が長きにわたる魔法使いと非魔法族の争いに終止符を打ち、両民族が手を取り合い一つの国家をつくりあげた。後に初代国王となるその青年が、国の永久なる安寧を願い、自分が亡き後も国民の拠り所となるように一本の苗木を植えた。


 これがラトランド国の建国伝説である。今となってはおとぎ話だと思われている上に王政ではないが、中には初代国王を神聖視する人々がいる。その者たちは建国伝説以外にも初代国王の言葉をまとめた教典や王の聖遺物などを崇拝しており、熱心に教会を支持している。


 中でも最も尊いとされているのが、初代国王が手ずから植えた木−聖樹である。植樹した王の力か樹それ自体の力なのかは不明だが、聖樹には人々の怪我や病気を治す癒やしの力があると言われている。その加護を求めて、巡礼者達は日々、教会本部の迷路庭園内の聖域を目指すのだ。


 リーリエと名乗る少女が、自らをこの神聖な木の化身と名乗った。これはローウッドとアルフレドにとって、にわかには信じがたいことだった。精霊や妖精の類が物語の中の空想の生き物だということは、誰もが大人になる過程で知ることになる現実だからである。


「聖樹の化身?そんなの聞いたことないぞ。」

「…神官の間でも、ごく一部にしか知らされていないことです。」

「神官達の考え、というのはどういうことかな?」


 たっぷりと間をおいてからローウッドが発したのは疑問である。


「ある時気が付いたら存在していて、神官がそう言い出したので…。私自身、よく分かっていないというのが正直なところです。」

「ほう…その場面を見た者は?」

「神官長が日課である聖樹への祈祷を捧げていた時、急に私が現れた…と聞いています。」


 それなりに長い人生を歩んできたローウッドにとっても、リーリエの話は未知の出来事である。彼は顎髭を触りながら考えこんでしまった。


「教会が聖樹の化身をでっちあげてるに一票!そう考えるのが普通だろ。」


 それまで黙って話を聞いていたアルフレドが口を開いた。だがそれに異を唱えたのは、リーリエではなくローウッドだった。


「アルフレド、少なくとも彼女は嘘は言っていないぞ。信じがたいが、話を進めてもらうためにもそこについては、いったん前提条件として受け入れることにしよう。」


 アルフレドは少し考えてから、ローウッドの言葉に従い椅子に深く座り直した。


「嘘は言っていない、ねぇ。で?そのありがたい木の化身様が何で教会の外に放り出されてんだよ。」

「…神官に殺されそうになったので、逃げ出したんです。」

「…は?」

「それは本当かね。」

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