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冬木に咲いた花の名は⑥
グリットリア学園で、一夜にして現れた花々の狂い咲きが、ちょっとした騒ぎになっている頃。
教会本部――
厚い扉を開けた先にある大神官の執務室は、白く、そして柔らかな空間だった。
壁も天井も淡い乳白色で統一され、窓辺には季節を問わず花が活けられている。大きな窓から惜しみなく陽光が差し込み、金糸で縁取られた薄布のカーテンを透かして床に落ちていた。
聖樹を模した彫像の前に、数名の神官がひざまずいている。誰一人として、顔を上げようとはしない。
「――以上が、現在までに判明している状況です」
報告を終えた神官の声は、わずかに震えていた。
それに対し、玉座と見紛うほど豪奢な椅子に腰掛ける大神官は、しばし沈黙したまま動かなかった。
「……依然として、行方は不明か」
低く、抑揚のない声だった。
「は。捜索は続けておりますが、現在のところ手がかりは見つかっておりません」
「あれを探し出せ」
大神官は、ゆっくりと息を吐いた。指先で肘掛けに刻まれた文様をなぞる。
「……必ずだ」
「はっ」
大神官の瞳には、慈悲も迷いもなかった。そこにあるのはただ、信仰という名の正義だった。
「この国を守れるのは――我ら教会だ」
神官たちは、言葉を返すことなく、ただ深く頭を垂れた。




