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(完結)

ラストです!お読みください^_^

「ようし、みんなご苦労さん! 今月も無事にこけを流し終わったぞ」


いきいきとした色合いの甚三紅じんざもみの壁や床に囲まれて、わたくしたちはすがすがしい気持ちになりました。


でものんびりはしていられません。


次の皇女さまが天から降りてこられるまでに、また苔を植え直し、手入れを施さねばなりません。

お宮を内側をすっかり鮮やかな深紅に染めておかねばなりません。


誰かがふと云いました。


「皇女さまはこの河を下って、いったいどこへ着かれるのだろう?」


質問には、誰も答えませんでした。

わたくしどもは誰ひとりとしてその答えを知らないからです。


「天から降りてくる皇女さまは、流れていった皇女さまとは、またべつの皇女さまなんだろうか」


今度はみんな、うっすらとわかりました。


どの皇女さまも似ているけれど、少し違う。

同じだけれど、同じでない。

そんな皇女さまなのだ。


でも、これをことばで上手く説明できる者はおりませんでしたから、誰もが揃って黙っていました。


「皇女さまが、こうやって毎月いらっしゃり、河を下っていかれ、また空から降ってくることを、『輪廻』と呼ぶ」


これは、誰もが知っておりましたから、みんなは口を揃えて、「そうだ、そうだ」「これは、輪廻だ」と云いました。


かといって、誰も「輪廻」が一体どういう意味なのかは知りませんでした。


うっすらと「めぐる」という意味だとはわかりますが、それ以上のことはわかりません。


誰に聞いても答えられないことがみんなわかっていましたから、わたくしをはじめ誰もが、意味を知りたいなどとは云い出さないのでした。


答えのないことをあれこれと気にしたところで、わたくしたちの肉体とたましいが、考える間もないくらい迅速に、次の仕事に向かいだすことをみんな知っています。


わたくしたちの胸のうちはもう、また来月に降りてくる月の小船の薄卵色うすたまごいろのやわらかい光への憧憬どうけいと使命感でいっぱいでした。



このお宮にしても、この世界にしても、わたくしたちには知りえないことがたくさんあるのです。


そして、理解がさっぱり及ばなかったとしても、どうすればいいのか、なにをすべきなのか、そういったことのもろもろは、わたくしたちが生まれる前から、誰かが決めてその通りに世界は動き、わたくしたちの身体も動き、わたくしたちを戸惑わせるのでした。


わたくしたちはただちに古代いにしえの記憶に動かされ、次のなすべきことに取り掛かり始めました。





さいごまでありがとうございました!

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