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異世界まではあと何日 ~プレ・移住記録~  作者: 於田縫紀
第10章 そして私は移住する
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第39話 形見? の自転車

 100円ショップは危険だ。

 ほとんどの商品が100円+消費税で購入できる。

 こんなのヒラリアには絶対存在しない。


 独自アイテムボックス魔法を開発した私には容量制限などない。

 そして移住してしまったら二度とこんな便利な店に来ることは出来ない。

 そう思うとどの商品も非常に魅力的に見えてしまう。


 落ち着け私、冷静に判断しろ。

 懐中電灯やランタン等は必要ないだろう。

 灯火魔法を自由に使えるから。

 

 そもそも電池を使うものは駄目だ。

 補充がきかないから。

 なお一生分電池を買って持っていくなんてのはパスで。

 

 それでも便利そうな道具や向こうには無さそうな食べ物類、各種容器が私を誘惑する。

 プラスチックのタッパーなんて何個あっても便利だよねとか。

 小型の金属製バットはあると便利な事も多いかなとか。

 安いタオル類は大量に持って行った方がいいなとか。


 太さ様々な紐類とかバッグ類なんてのまで誘惑してくる。

 収納はアイテムボックスにせよ、あれに入れてしまった方がいいかななんて形で。


 そしてもちろんクリアファイルは買うべきだ。

 最低でも10冊単位で。


 ここで私ははっと気づく。

 これは孔明の罠だ。


 必要そうなものは既にひととおり準備した筈。

 そう自分に言い聞かせる。

 それでも安売りのノートだの色ペンだの色鉛筆だの誘惑が……

 

 駄目だ。

 ここは一度、戦略的撤退!

 冷静になって頭を冷やすのだ。


 とりあえず何も買わず100円ショップを出る。

 そして隣のスーパーへ。


 この店は中が少しごちゃごちゃしているが、アイテム数はそこそこ及第点。

 惣菜類が充実しているのだが、今日の私が気になるのは調味料系。

 ここで何でもないように売っているもののほとんどが向こうでは手に入らないのだ。

 そう思うとつい買い漁りたくなる。


 落ち着け私。

 今まで使った事がない調味料なんてわざわざ買う必要は無いだろう。


 香辛料系統もそうだ。

 どうせ新規に試すならヒラリアに行ってから。

 向こうで手に入るものから探せばいい。


 でも日本の味が恋しくなった時、缶詰とかレトルトが欲しくなるかな……


 駄目だ、ここも戦略的撤退。

 隣のドラッグストアへ、いや信号で道を渡って釣具店へ行くか。

 気分を一新する為に。


 ◇◇◇


 大型ディパックの他にエコバッグ2つを持って行って良かった。

 いや、それだけ準備してしまった事がむしろ敗因か。


 つまりはまあ、買いすぎたという事だ。

 釣り具から食品、100円ショップで購入した細かな日用品まで。


 おかげで随分時間がかかってしまった。

 10時過ぎに家を出て、帰って来たのが午後2時過ぎ。

 行った場所は自転車で5分程度なのに。


 それでも私、これだけ長時間の外出が出来るようになったんだな。

 そう思うと悪くない。

 つい1月前は外出すら困難だったのだ。

 私、かなり復調してきている。


 さて、購入して来たものは後で登録をしておこう。

 床に並べて、スマホのアプリを起動して写真を撮りまくるのだ。

 そうすれば自動的に持ち物リストに載るから。


 しかしその前に昼食だ。

 今回は久しぶりに弁当を購入。

 味が濃いのは承知済みで。


 今のうちに他人が作った日本の味を経験しておくべきだろう。 

 そんな事を思ったから。


 今回のお弁当は、

  〇 牡蠣フライ&海老天弁当

  〇 アナゴ丼

  〇 広島風お好み焼き

の3点。


 弁当コーナーが3つで千円だったので、つい買ってしまった。 

 余ればアイテムボックスに収納すれば傷まない。

 だからまとめて買っても大丈夫。


 牡蠣フライ&海老天はやはり美味しい。

 どちらもメニューとして好きだし。

 海老天のタレがさらっとくどくないのが悪くない。


 この辺は移住後も海辺だから採取できれば作れる。

 油や小麦粉、パン粉はまとめて購入済み。

 卵もある程度は買ってあるし。


 でもヒラリアにも牡蠣はいるだろうか。

 海老はきっと似たようなものがいると思うけれど。


 アナゴ丼は甘細かく刻んだ煮穴子と角切りのきゅうりがのった丼。

 濃い味が苦手な私もキュウリのおかげで食が進む。

 キュウリの代用品は向こうにあるかな。

 そう思いつつ。


 弁当2つを半分ずつ食べた時点でおなかいっぱい。

 だから残りと広島風お好み焼き弁当はアイテムボックスへ収納。


 さて、それでは持ち物登録をしようか。

 そう思ってふと思い出す。

 先に自転車を整備しておこう。


 整備と言っても大した事はしない。

 変速もブレーキも問題なかったから今回は注油だけ。


 廊下に通販でたまった段ボールをひろげ、自立するようスタンドを立てて、後輪の軸がその上にくるように自転車を置く。

 クランクを逆に回しながらチェーンに注油し、そして後ろの変速機にも注油してと。


 余分な油はブレーキ関係に飛ぶと悲しいので軽くふき取ってと。

 最後にクランクを回しながら前後ともゆっくり変速させ、オイルを回したらOKだ。


 ついでにあちこちのネジやボルトが緩んでいないか確認。

 増し締めする必要は無さそうだ。


 坂入先輩の形見? だから大事に使わないと。

 別に坂入先輩、死んではいない筈だけれど。

 なんて思うと思わずしみじみしてしまう。


 先輩は今も真っ当に地方公務員をやっているのだろうか。

 実家の関係でお役所勤めをある程度した後、親の跡をついで地方の議員をやる事になっていると聞いた。

 しかし正直そんなの先輩、いや奴には合っていないような気がする。


 今頃大丈夫なのだろうか。

 私のようにダウンしていないだろうか。

 その辺気になる。


 3年前に峠場さんと美穂の結婚式で会った時は大丈夫だった。

 少し疲れた顔をしていたような気もしたけれど。

 でもきっと私も同じだっただろう。

 そして私はダウンして、今、少しだけ復活して異世界移住を目指している途中。


 先輩は大丈夫だろうか。

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