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異世界まではあと何日 ~プレ・移住記録~  作者: 於田縫紀
第7章 特産品を考える
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第28話 本日の第2ターン

 時計を見る。

 午後5時。

 本日の2ターン目、開始だ。


 昼寝をすると1日2ターン行動が出来る。

 最近編み出した時間を有効に使う方法論だ。

 残念ながら健常な社会人や学生には役に立たないだろうけれども。


 さて、砂糖醤油漬けの干物を作ろう。

 洗ってひっくり返しておいたバットをキッチンから持ってくる。

 ついでにパックご飯と箸もだ。

 

 砂糖醤油漬けのイワシとサバをバット上の網の上に並べる。

 それでは魔法による干物作成、開始。


 美味しくなれ、美味しくなれ。

 半ば呪いのようにそう思いつつ水分が蒸発していくのをイメージする。

 サバの肉厚な内部からも水分が染み出て表面へ出て、水蒸気になって出て行くように。


 なお温度は上げない。

 あくまで陰干し乾燥のイメージだ。

 

 うん、頃合いだろう。

 それでは焼き作業開始。

 全体の温度を上げた後、表面に更に高温をかけてパリッと仕上げる。

 パックご飯も魔法で加熱し、焼き上がったばかりのいわしを載せれば完成だ。


 うん美味しい。

 正しい味醂干しの味がする。

 味醂はちょっとしか入っていないけれど。

 これもやはりご飯に合う。

 甘辛さがちょうどいい。


 ただイワシは良かったがサバは少し脂が少ない気がする。

 この辺は脂ののり具合によって干し具合を変えた方がよさそうだ。 

 何なら骨と頭を取って、もう少し薄味にして、もっとカリカリカラカラに乾燥させてもいいかもしれない。

 おつまみ用に。


 あとゴマを買ってくるのを忘れた。

 上に散らせばもっと美味しかっただろう。


 さて、ここからが本ターンのメインイベント。

 カツオとシイラをさばく作業だ。


 念のためさばきかたをネットで検索し予習する。

 こうやって何でもWebで調べられる環境は便利かつ貴重だ。

 後で印字して移住後も活用できるようにしておこう。

 あとはウナギみたいな魚のさばき方とか、コチみたいなのとかも。

  

 ふと思い出す。

 魚関係は坂入先輩がいれば楽だったなよなと。

 自分一人の食事は手抜きの癖に、凝った料理を作るのは大好きなのだ。

 それも洋食系ではなく和食、更に言うと魚介類系。


 学生時代、先輩の家で刺身とたたきを作って貰って皆で食べた時を思い出す。

 あの時はもっと安いカツオがあったのだ。

 確か1本500円とかで。


 あの時、たたきを作る過程で天井近くまで炎があがった。

 だから大丈夫かと聞いたらこんな回答が返って来た。


「問題ない。火災報知器は壊してある」


 それは逆に問題があるだろうと皆で突っ込んだのだった。


 さて、それではさばくとしよう。

 タブレットパソコンで動画を見ながら。


 ◇◇◇


 結構疲れた。

 割に面倒だしキッチンも汚れる。

 まな板や包丁を洗ったり流し&キッチンを片付けて洗うのも大変だ。


 なおシイラは体表の粘液を洗い流すのも面倒だった。

 あと包丁がいまひとつでカツオのうろこを取るのも今ひとつの出来。


 移住までに魚用にいい包丁を買っておこう。

 あと砥石も欲しいかな、出来れば。

 タワシも余分を含め買っていこう。


 さて、カツオは5枚に、シイラは3枚におろした。

 それぞれ身はアイテムボックスに入っている。


 ついでに言うと頭もアイテムボックスに入れてある。

 魔法を使えば兜焼きを作れそうだから。

 更に骨部分もとってある。

 骨際の身を剥いて食べるのがまた美味しいのだ。


 さて、疲れたので本当は行動ターン終了にするべきところだ。

 しかしさばいた身を見て思ってしまったのだ。

 刺身が美味しそうだな。

 最近食べていないなと。


 夕食はもう食べた。

 しかし私の食事の義務は『生きるために食べる』事だけ。

 夕食を必ず食べるというルールは作ったが、2回食べてはいけないというルールは作っていない。


 そして刺身、カツオの赤身とシイラの白っぽい身が私を誘惑する。

 これは駄目だ、気になって眠れない奴だ。

 睡眠薬も万能ではない事を私は知っている。

 

 誰かが言っていた。

『やらずに後悔するよりやって後悔するほうがいい』


 この台詞に続いて坂入先輩の声と口調で、

『そうして人間は傷口を広げる』

なんて解釈も思い浮かんだけれど、それは無視の方向で。


 折角掃除し消毒までしたキッチンのまな板にサクをのせる。

 シイラは3枚おろしで大きいから更に半分で。

 小骨を抜くのはめんどいのでそのまま刺身サイズにカット。

 皿にのせテーブルへ。


 キッチンとまな板、包丁を再び洗った後。

 皿2つを出し、片方には醤油とワサビ、もう片方にはマヨネーズとワサビを入れ、箸と一緒にテーブルへ。

 なお私は醤油もマヨもワサビは混ぜる派だ。


 この辺の調味料についても後で調べておこう。

 ヒラリアで買えるか、代用品があるか、自作しなければならないかを。


 まずはカツオから、わさび醤油で。

 うまい。

 久しぶりだがやはり美味しい。

 

 一方でシイラは上品で癖がないが少しだけ物足りない味。

 こっちはマヨワサビが正しいようだ。

 タルタルソースでもあれば尚いいのかな。

 これでも充分美味しいけれど。


 やはり刺身だけではなくご飯も欲しくなる。

 酒派の人もいるだろうけれど私は飲めないから。

 ほんの少しだけ迷った後、立ち上がってキッチンへ。


 パックご飯を即座に温められるのは魔法の利点だ。 

 電子レンジより遥かに有能。

 それではご飯も一緒に、いただきます。


※ 火災報知器は壊してある

  真似しないようにしてください。なお先輩は突っ込まれた後、『内部の配線を外しただけなのに大げさな』と言う弁明をした模様です。勿論後日、しっかり修理しています。

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[一言] >『やらずに後悔するよりやって後悔するほうがいい』 >『そうして人間は傷口を広げる わかっちゃいるけどやめられない
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