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異世界まではあと何日 ~プレ・移住記録~  作者: 於田縫紀
第3章 賽は思い切り投げられた
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第9話 やはり調子はいまひとつ

 現在の私、うつのせいか薬のせいか集中力があまり持たない。

 だから検索結果の確認も休憩をはさみはさみ、時に簡単なブラウザゲームをしながらだ。

 結果、検索ナビが提示した移住候補全てを読むのにほぼ1日かかってしまった。


 休憩ついでに昼食と夕食を食べて薬も飲んだ。

 食事のメニューは3食とも同じで固形バランス栄養食を1食につき1箱。

 これにスポーツドリンク2リットルを1日がかりで飲む。

 これで必要カロリーと必要栄養素が最低限ではあるが確保される計算だ。


 以上が私の飲食義務。

 勿論この義務を決めたのは私自身。

 自分が死なない為の最低限の自衛策だ。


 しかしこれでは水分が若干足りない。

 だから一応お茶のペットボトルも用意してある。

 あとは薬を飲む時用の水のペットボトルも。

 この2つのペットボトルは飲食義務外扱い。


 これら飲食物は通販の段ボールのままベッド横に置いてある。

 ベッドから手を伸ばして届く範囲だ。

 食べる気力がない今の私にとって食事は楽しみではなくノルマ。

 だから簡単に食べられるこれで充分以上。

 本当はこれでも食べるのが面倒なくらいだったりする。


 なおゴミ箱は設置していない。

 結果として空のペットボトル、固形完全栄養食の箱や袋が散乱する。

 一応同じ方向に置くようにはしているけれど。 

 もう少し動けるようになったら片づけようと思っている。

 今はそこまでの気力がでないから。


 さて、検索結果に一通り目を通した。

 結果的には12件目、ヒラリア共和国の開発推進区域が一番良かった。

 というか他の候補は微妙にいまいちな部分があった。

 街が近すぎたり遠すぎたり、体制が異なる国との国境近くで微妙に緊張感がありそうだったり。


 飲食義務外のペットボトル入りジャスミン茶を一口飲んで一息入れる。

 さて、次はどうしようか。

 

 場所が決まったといってもまだ大雑把な範囲だ。

 検索結果で出た他のいくつかの場所と違って、ヒラリア共和国の開発推進区域はかなり広い。

 南北最大400km弱、東西最大160km弱くらいある。

 真四角では無いのでそのままかけた面積にはならないけれど。

 

 ここからどう具体的に絞ろうか。

 何ページか説明を読んだところ、移住希望場所予約へのリンクを発見した。

 早速リンク先へと進んでみる。


 詳細な場所データを含む移住予約のページが出た。

 開発推進区域は地図上ではきっちり区画整理されている模様。

 この区画を具体的に指定して移住希望の予約をするようだ。


 まずはどんな場所があるか見てみよう。

 見るだけなら無料だし義務もない。

 早速チェックを開始だ。


 まずは内海にある、大きな干潟がある地域の詳細地図を出す。

 概略図が出て来た。

 標高20~60mの台地が中心で、海、川沿い、湖がある全体として平らな地形の場所だ。


 既に予約済みの場所も幾つかある。

 だが予約されているのは海沿いではなく台地上、それも近くに川か湖がある場所がほとんどだ。

 この人達は畑作や放牧を主体に考えているのだろうか。


 予約できる区画の広さは場所によって違う。

 居住や耕作可能不可能な岩場や荒れ地を含む区画は広い。

 一方平坦で川や湖等の水利がある区画はやや狭め。

 概ね1区画、2キロ四方~8キロ四方といった感じ。

 気前がいい広さだ。


 勿論気前がいいだけではない。

 当然ながら予約にはそれなりの規則や条件がある。


 予約可能な期間は3ヶ月。

 つまり予約をしたら3ヶ月以内に移住しなければならない。

 移住できなかった場合は予約取り消し。

 また移住1世帯あたり1箇所しか予約は出来ない。

 更に移住後は5年はヒラリア共和国に居住する義務がある。


 その代わり移住者や開拓者には特典もある。

 移住後3年は税金が免除。

 その上予約区域の土地は無料で譲渡。


 うん、なかなか夢がある。

 惹かれる内容だ。


 さて、見た限り海沿いの場所は今のところほとんど予約が入っていない。

 内海沿いのいかにも砂浜という感じの海岸に1箇所だけ予約があるだけ。

 どうやら移住者の生活プランは農業や牧畜業が中心の模様。

 事例もそんなのが多かったし。


 しかし私はただの砂浜には興味がない。

 漁業が出来る多様な海岸を欲しているのだ。

 だからこの予約傾向は大変ありがたい。

 ライバルがいないようだから。


 それらしい湾がありそうな場所をかたっぱしからチェックする。

 先程の検索結果よりもしらみつぶし的な作業だ。

 しかしこっちは既に条件がかなり良好なのは確認済み。

 つまりよりよい場所を具体的に確認できる訳だ。


 なお1人漁業が目的なので地形以外も確認する。

 例えば潮汐の情報なんてのは重要だ。


 ちらっと読んだ情報によると内海側の方が干満の差が大きい。

 惑星オースには月のような大きな衛星は無い。

 だから潮汐は太陽というか中心恒星の影響だけだ。


 満潮は午前2時頃と午後2時頃の2回、干潮は午前8時頃と午後8時頃の2回。

 潮位の差は外海側が2m程度、内海側が2~4m。


 差が大きい方が私としては面白い。

 その分獲物も多種類になるから。

 憧れのすだて漁も出来そうだし。


 しかし何百キロという範囲の中、いかに海沿いで特徴的な地形の場所だけとは言えただ1カ所を探すのは大変だ。

 しかも私の希望条件、何気にかなり厳しい。

 砂浜と岩場両方があって、川もあるところはかなり少ない。

 干潟も欲しいなんてなると更に少ない。


 最初に見た大きな干潟の近くは今ひとつだった。

 川もあって陸地側も平坦で開発はしやすそう。

 だが川がゆる過ぎてあまり綺麗そうではない。

 それに海側の環境が遠浅の干潟だけ。

 かなり沖まで行かないと深さが足りない。


 私としては綺麗な川と水深が深い海も欲しい。

 勿論干潟だけでも条件は決して悪くはないのだろう。

 しかしあくまで他が無ければという判断となる。


 その後も見ては諦め、見ては諦めという作業が続く。

 結果、少し疲れた。

 タブレット画面から目を離す。

 飲食義務外のペットボトルをあけて一口飲む。


 うん、今日はこれくらいにしよう。

 そもそも今の私、長時間の作業なんて出来る状態じゃない。

 昔はあれほど好きだった本でさえ全く読めなくなった位なのだ。


 そう思って布団にもぐり目をつむる。

 しかしなかなか眠れない。

 どうしても移住場所が気になる。

 こうやっている間にも誰かにいい場所を取られてしまいそうな気がしてしまう。

 予約傾向からライバルは少ないとわかっているのに。


 仕方ない。

 私は布団から手を伸ばして紙袋を取る。

 即効性のある抗不安薬を1錠出して口へ。

 薬用の水ペットボトルで胃袋へ押し流し、そして再びタブレットを手に取る。


 即効性といっても飲んで瞬時に効くわけではない。

 だから効くまでの間、もう少しだけ場所探しをするとしよう。

 そう思った訳だ。


 薬が効くまでの間だから適当でいいかな。

 今までの大規模な干潟とは違う地域で、でも湾内っぽい場所を適当に。

 そう思って予約サイトで、今までとは違う場所の詳細地図を呼び出した。


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