田
『ゆえに問うなかれ
誰がために鐘は鳴るやと
そは汝がために鳴るなれば』
――ジョン・ダン『死に臨んでの祈り』
『田がために蛙は鳴く ー 蛙鳴蝉噪』
作者:変態糞土方
『春風で揺れる花
手を振る君に見えた』
――サカナクション『忘れられないの』
0.島
0-1.
“私”の生まれ育った亜熱帯の「島」では、地球上の古今東西の、ありとあらゆる種類の「蛙」たちが棲息していた。
宝石のように美しい、ビビッドな色彩の蛙……。
水掻きを翼のように広げ、木から木へと滑空する蛙……。
風船のように膨らみ、きゅぅきゅぅと可愛らしい音色で鳴く蛙……。
商社のマスコットキャラクターとして薬局の店頭に立つ、プラスチック製の蛙……。
これら、個性豊かな蛙たちは、本来であれば、
南米の熱帯雨林や……、
東南亜細亜の島々……、
南アフリカの砂漠……、
日本の薬局の店頭……、
……などの土地にて、離れ離れに棲息している筈なのである。
では、私の古郷の「島」では、なぜ、どうして、古今東西の蛙たちが一堂に会して入り乱れ、共存しているかのような生態系が築かれているのだろうか……?
◇ ◇ ◇
この地球上には、〈ウシガエル〉という蛙が存在している。
その"名”の通り、まるで「牛」のような姿形をした蛙である。
最大で2メートルを越える体長。
白地に黒い模様が点在する表皮。
そして頭部から生えた2本の角……。
このように、遠目に見れば本物の牛と見間違えてもおかしくはない風貌をしているのである。
現在でこそウシガエルは日本列島の湿地帯などで細々と棲息しているが、実は海外から渡来した「外来種」であり、最初から日本に棲息していた訳ではない。
元々はアメリカ大陸に棲息していたのだが、その身の「肉の味」さえも“牛肉”に似ていたため、人間によって捕獲され、「食用」として日本にも輸入されたのだ。
だがしかし、幸か不幸か、蛙を食べるという文化や風習の無かった日本においては流行らず、廃れ……。
そして不良在庫となった食用のカエルたちは……、飼育場から脱走すると、そのまま野生化して日本の土地に帰化し、今日における〈ウシガエル〉と成ったのである。
(余談だが、西部開拓時代のアメリカでは、野生の牛を捕獲することを生業とする「カウボーイ」なる職業が存在していた。
「カウ」とは「牛」を意味する単語であるとされ、「ボーイ」は若い男を意味する単語である。
だがしかし、それらの語源は日本語の「蛙」と「追いかける」から来ているとする学説も存在し……。
すなわち「カエル追い」という言葉が語源であり、カウボーイは牛ではなく牛のように巨大な「カエル」を追っていたのではないか?
とする説も、まことしやかに囁かれているとか、いないとか、真偽は定かではない。)
◇ ◇ ◇
そう、最初はウシガエルであった。
かつて、“稲作”以外にこれといった産業の無かった「島」の住民たちは、何を思ったのか、ウシガエルの輸出入による「村起こし」を画策したのである。