表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

























『ゆえに問うなかれ

 がために鐘は鳴るやと

 そはがために鳴るなれば』


  ――ジョン・ダン『死にのぞんでの祈り』
























  『がためにかえるは鳴く ー 蛙鳴蝉噪あめいせんそう


   作者:変態糞土方
























『春風で揺れる花

 手を振る君に見えた』


  ――サカナクション『忘れられないの』
























    0.島



  0-1.


 “わたし”の生まれ育った亜熱帯あねったいの「しま」では、地球上の古今東西の、ありとあらゆる種類の「かえる」たちが棲息していた。



 宝石ほうせきのようにうつくしい、ビビッドな色彩しきさいかえる……。



 水掻みずかきを翼のように広げ、木から木へと滑空するかえる……。



 風船のように膨らみ、きゅぅきゅぅと可愛らしい音色ねいろで鳴くかえる……。



 商社のマスコットキャラクターとして薬局やっきょく店頭てんとうに立つ、プラスチックせいかえる……。



 これら、個性こせいゆたかなかえるたちは、本来であれば、


南米の熱帯雨林ねったいうりんや……、


東南亜細亜(アジア)島々(しまじま)……、


南アフリカの砂漠さばく……、


日本にほん薬局やっきょく店頭てんとう……、


……などの土地にて、離れ離れに棲息している筈なのである。



 では、わたしの古郷の「しま」では、なぜ、どうして、古今東西のかえるたちが一堂に会して入り乱れ、共存しているかのような生態系が築かれているのだろうか……?



◇ ◇ ◇



 この地球上には、〈ウシガエル〉というかえるが存在している。


 その"名”の通り、まるで「うし」のような姿形をしたかえるである。

 最大で2メートルを越える体長。

 白地に黒い模様が点在する表皮。

 そして頭部から生えた2本のつの……。

 このように、遠目に見れば本物のうしと見間違えてもおかしくはない風貌をしているのである。

 現在でこそウシガエルは日本列島の湿地帯などで細々と棲息しているが、実は海外から渡来した「外来種がいらいしゅ」であり、最初から日本に棲息していた訳ではない。

 元々はアメリカ大陸に棲息していたのだが、その身の「肉の味」さえも“牛肉”に似ていたため、人間によって捕獲され、「食用」として日本にも輸入されたのだ。

 だがしかし、幸か不幸か、蛙を食べるという文化や風習の無かった日本においては流行らず、廃れ……。

 そして不良在庫となった食用のカエルたちは……、飼育場から脱走すると、そのまま野生化して日本の土地に帰化し、今日における〈ウシガエル〉と成ったのである。


(余談だが、西部開拓時代のアメリカでは、野生の牛を捕獲することを生業とする「カウボーイ」なる職業が存在していた。

 「カウ」とは「うし」を意味する単語であるとされ、「ボーイ」は若い男を意味する単語である。

 だがしかし、それらの語源は日本語の「かえる」と「いかける」から来ているとする学説も存在し……。

 すなわち「カエル追い」という言葉が語源であり、カウボーイは牛ではなく牛のように巨大な「カエル」を追っていたのではないか?

 とする説も、まことしやかに囁かれているとか、いないとか、真偽は定かではない。)



◇ ◇ ◇



 そう、最初はウシガエルであった。


 かつて、“稲作いなさく”以外にこれといった産業の無かった「しま」の住民たちは、何を思ったのか、ウシガエルの輸出入による「村起こし」を画策したのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ