白と黒④
大人しくクロについていく。開いている窓があったのでそこから建物の中に侵入し、長く続く廊下を進んで右へ左へ。まるで迷路のようだ。
「ついたぞ」
クロが立派な扉の前で立ち止まった。重厚そうな扉には取っ手がついていて、かなり頑張らないと届きそうもない。もしかしてこのオレ様猫、私にジャンプして開けろって言うんじゃないでしょうね。
「この部屋?でもドアが閉まってるわよ」
「閉まってたら開ければいいだけだ」
そう言って、クロが扉に右前脚を伸ばす。前脚で触れた部分がポワッと光り、扉がゆっくりと開いていく。
「魔法?!初めてみた…」
魔法を使える者はとても希少だ。そのほとんどが国の警備の為に王都に集められていると聞く。というか、それも人間の中の話で、魔法が使える猫なんて聞いたことがない…。もしかして、魔法が使える特別な猫だから王宮にいるとか?それとも実験体?
「何ぼーっとしてるんだ、早く行くぞ」
「ちょ、待ってよ!」
部屋の正体は厨房で、棚にはたくさんの野菜や果物、見たことのない調味料なんかも置いてある。うちのお屋敷の3倍はありそうな広さだ。
「ここから好きなものを食べるといい」
「好きなものって言っても、生野菜とまるごと果物はちょっとそそられないわよ」
「ワガママな奴だな」
そう言うとクロが棚を漁り始め、豪華なハムとソーセージを取ってきた。
「これならどうだ?」
「それなら…まあ…。でも、こんなでっかいもの食べてバレないの?」
「どうせ腐るほどあるんだ、1つや2つなくなったところで気にしない」
「だったらいいけど」
クロと一緒にハムとソーセージの封を開け、どこから持ってきたのかツナの缶も開け、ついでにまるごと食べれそうな果物にもかぶりついた。最後は鍋に入った冷めたスープで喉を潤す。
屋敷では出された食事しか食べることのないお利口な猫ちゃんでいるため、人間の食べ物を自ら食べるのは初めてだ。
「あー美味しかった!せっかくならもっと料理的なものも食べたかったけど」
「今度は昼間に来るといい。好きなものを好きなだけ食べさせてやる」
「ふふ、昼間に王宮に忍び込むなんてとってもスリリングね」
「その代わり、外の世界を教えると言う約束は忘れるなよ」
クロが真っ直ぐな瞳でこちらを見ている。金色の瞳が妖しく光を放っていて目が離せない。
形のいい耳、綺麗に生え揃っている白い髭、鼻はしっとり艶やかだ。口元はさっき食べたスープで少し汚れていて…
ペロッ
「な?!?!?」
気付いたらクロの顔を舐めていた。
投稿しようと思ったら大地震が来て日付が変わってしまいました…。皆様大丈夫だったでしょうか。
(まだ地震のニュースが続いてます)
目が冴えてしまったので、このまま次話の執筆もしてしまおうと思います!