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二人の夜明け  作者: 小夜
9/17

同じ時の中**

僕はしばらく、黙って星空を見ていた。


闇夜に輝く無数の光はとても美しかった。


僕はゆっくり深呼吸し凛に話しかける。

「凛、初めて出会った日のことは覚えているかい?」


僕たちが初めて出会った日は夏休み終わりの始業式だった。

厳密にいえば同じクラスだったから、初めて関わったという方が正解だろうか。


半ば押し付けで決められたクラス委員の僕は、帰りのホームルームで

担任からみんなの宿題チェックを任された。

「おいおい、嘘だろ.......」


こんな膨大な宿題を、二人でなんて

気が遠くなりそう。


ホームルームが終わり、ざわついている中

僕はもう一人のクラス委員である金城に声をかけた。

「あのさ、金城.....」


「ごめん!!俊也!私これから部活が.....」

俺の言葉を遮るようにそういうと金城は手の平を合わせた。


「お、おぅ、それなら仕方ないよな」

僕の口から気持ちとは裏腹な言葉が出た。

「暑いし気をつけろよ、がんばれって」


「ありがとう!今度ジュース奢るから!」

そう言い残し金城は去っていった。


一人で、この量.......。


僕は大きくため息をつく。

気がつくと教室の中は俺一人だった。


「やるか.......」

こうして俺は作業を始めた。





あれからもう3時間も経っている。しかし終わる気配は一向にない。

外からは蝉の声や部活動に励む声が聞こえてくる。


僕はしばらくその音に浸りぼーっと窓の外を見ていると、ガラッと音を立てドアが開いた。

僕は驚いて音がなった方を見た。


「あれ?まだやってたの?お疲れ様」


「なんだ、上野か、どうしたんだよ」


「これ、家に置き忘れてて」そういうと上野はノートを差し出した。


「あぁ、なるほどな」僕はノートを受け取り、チェックをする。


上野は机の上のみんなの宿題をまじまじ見た後


「ねぇ、私も手伝うよ」と言った。



あの時は本当にうれしかったなぁ


くだらない話で盛り上がっちゃって、結局終わったのは5時ぐらい

になったんだっけ。


「やっと終わったね」と凛は笑顔で言う。

夕日に照らされた君の姿は、とても美しかった。

それは今でもはっきりと覚えている。


あの時、僕の顔が熱かったのはきっと夏の夕日のせいだろう。


そこから僕は君のことが気になり始めた。


連絡先を交換したときは胸が張り裂けそうだったし

授業中もいつの間にかペンは止まって、気が付くと君の方ばかり見ていた。


数学の時間、君はいつもウトウトしてたね。


「気持ち悪いかな」

僕は照れくさくて少し笑った。


そして、一呼吸おいて一番輝いている星に向かって言う。

「僕は君に恋をしていたんだ」

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