男の言葉 *
しばらく二人は沈黙に包まれながら星を見ていた。
しかし,
その沈黙は男によって引き裂かれた。
「今日は星が綺麗だね。」男がそういう。
私は驚いて男を見た。
まるで私に話しかけてるように感じたからだ。
でも、そんなはずはない。
だって、私は....
死んでいるのだから......
しばらくすると
「あの日もこんな星が綺麗な夜だったね。」と男は続ける。
私は満点の星空を見る。
「凛、覚えているかい?ここで約束を交わしたことを」
「でも、それは.......」次第に男の声が震えだす。
「叶わなかったね」
そういうと男は泣きだしてしまった。
しかし、私にはどうすることもできない。
「かわいそうに...きっとこの人は大切な人とお別れをしてしまったんだわ」
私は男が落ち着くまで男を見守った。
夜の闇はさらに深くなり、星の光が一層輝く
男はひとしきり泣くと落ち着いたのか、再び語り始めた。
「凛、初めて出会った日のことは覚えているかい?
僕が先生に頼まれて一人でみんなの夏休み提出物のチェックをしててさ....」
男は鼻をすすりながら続ける。
「でも、全然終わらなくて、途方に暮れているとき、
宿題を取りに戻った君が教室に来て.....」
「それで、手伝ってくれたよね。
あれ、本当にうれしかったんだ。」
男は少し嬉しそうに言う。
私はなんだかすこし恥ずかしく感じた。
まさか、こんなところで人の馴れ初めを聞くことになるとは.....ね。
「そこから僕は君のことが気になり始めて、思い切ってLineを交換した日は
嬉しくて眠れなかった。君にとって連絡先を交換しあうのは
はいつものことだろうけど、僕にとってはすごい緊張したんだよ」
私は軽く頷きながら男の顔を話を聞く。
「僕は君から返事が来るたび、すごい嬉しかったんだ。」
「君のことを考えるとなぜだか胸がドキドキしたし」
「授業中もいつの間にかペンは止まって、気が付くと君の方ばかり見ていたよ」
「気持ち悪いかな」男は照れ臭そうにに笑った。
私は胸があたたかくなるのを感じた。
「僕は君に恋をしていたんだ」
胸がざわつく、しかし私にはそれがなぜなのか
わからなかった。