懐かしの場所*
歩き続けて一体どれだけ時間がたったのだろうか。
確かめる術はないがきっとかなりの時間が経過しているはずだ。
気が付けば人や車の姿はなく、家の明かりもない。
町は静寂の闇に包まれていた。
私はようやく公園の入り口にたどり着いた。
「ここで私は........」
公園へと足を踏み入れる。
昼間は多くの人でにぎわいを見せているのに、夜は誰の姿もなく
寂しげに感じた。
すると、私の鼓動は速くなる。
私は驚いた。
「どうして、こんなに胸がドキドキしているの?」
胸に手を当て、私は周りの景色を見る。
ただの公園のはずなのに、
なんで......
いったい何が、私をこんな気持ちにさせているのか
私はわからなかった。
少しの間、私はその感情と風に身を包まれながら、夜空を見ていた。
星が綺麗だ。
まるで誰かに気づいてもらうために瞬いているみたいだ。
すると、ふと鉄塔が目に入った。
「あそこならここよりもよく見えそう。」
私はその鉄塔に惹かれるように近づき梯子に手をかける。
梯子はひんやりとしていた。
私はカツカツと音を立ててゆっくりと鉄塔に登る。
だんだん地上から離れてゆく。
上に行くつれ、町全体が見えるようになる。
「今夜だけは、この星空は私の物よ」
私はひたすら登り、鉄塔の最上階が近づく。
こんなに星が綺麗だと感じたのはいつぶりだろうか。
最後の鉄パイプに足をかける。
私は、この星空を独り占めできると思っていた。
が、それはできなかった。
私よりも先に一人の男がいたのだ。
こんな時間に人がいるとは思わなくて
気まずい私は下へと降りようとしたが。
どうせ見えていないのだ、私には関係ない。
私は男の顔を覗き込んでみた。
「えっ.......」
男の顔はひどかった。
泣きはらしたのがすぐにわかるくらい目が腫れている。
顔には涙の跡があり、泣いていたことがわかる。
「あなた........」
私は男に話しかける。
「悲しいことがあったのね。」
「私もなのよ。なんでか悲しいの」
私は男の隣に座る。
「私たち、同じね.....」
私たちは星が降る夜の街を見下ろした。