夜の中に独り**
僕は電車に乗り、移り変わる街をぼーっと見ていた。
「凛......」
君は今、何をしているんだい。
もう、天国には着いたかな。
しっかり者の君のことだ。きっと大丈夫だろう。
そんなことを考えていると、いつの間にか栞奈駅についていた。
僕は電車を降り、改札を出た。
公園は改札を出たところのすぐそばにある。
僕は公園へと足を踏み入れる。
当たり前だが誰もいない。
静寂の中に唯一聞こえるのは僕の足音だけだった。
凛.....
君のもう一度笑った顔が見たい。
君に会えるのなら、僕はなんだってする。
凛.....
僕はこれから、君に会いに行く。
でも、もしかしたら会えないかもしれない。
神様は、僕のことを許してくれるだろうか。
僕は君と同じ所へはいけないかもしれない。
だから、夜明けまで、少し待ってくれないか。
君との日々をすべて振り返ってから、
僕は会いに行くよ。
僕は心の中で凛に語り掛けた。
そして、夜空を見上げた。
凛...一緒に思い出そう。君が生きた時間を.......
ふと横を見ると鉄塔があった。
「そうだ、あの日もここに登って星を見たね。」
「あの上なら、少しでも空の近くなら、君もまた僕の話を聞いてくれるよね」
僕は鉄塔に近づき、梯子に手をかけ、登り始める。
鉄のひんやりとした感じが伝わってきた。
少しずつ僕が登るにつれて、凛に近づいている気がした。
少し、胸がざわついた。
僕は登り終えると、あの日と変わらない風景が広がっていた。
ただ、君が隣にいないだけで。
「母さん、父さん、ごめんね。」
僕はそう一言だけ呟き、腰を下ろした。
僕は涙が止まらない。
あの日は隣に君がいたのに、今は独りぼっち。
ここに凛がいてくれれば、どれだけ喜ばしいことだろう。
僕は心を落ち着かせるために目を瞑り、大きく息を吸う。
風が僕の間をすり抜けてゆく感覚を感じながら。
僕は闇に閉ざされた夜の街を見降ろす。