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二人の夜明け  作者: 小夜
2/17

残りの時間*

私はしばらく立ち尽くしてしまった。


そして私はすべてを思い出した。


「そっか........そりゃ、そうだよね」私はぽつりと呟く。

うん....。そりゃ聞こえない...はずだよね、だって........


私は、母が見ている遺影に目を向けた。


私が笑っている。


「だって、死んでるんだもん。当たり前か.....」


そうだ。私はおととい、病院で死んだのだ。

俊也に手を握られながら、そこで私の時は止まった。


私の遺影を無言で見ている母を見ていると、私は、とあることを思い出した。


“人はこの世に肉体がなくなると、夜明けの時間まで、魂だけがこの世に残ることができる。

しかし、夜明けが近づくにつれ、だんだん記憶が消え始め、さらにその次は感情がなくなり始める。

そして、夜明けになると魂は浄化される。”


私の脳裏には、最愛の人の顔が浮かぶ。

こうしてはいられない。

現在の時刻は21時、私に残された時間は約8時間.....。


私はもう一度、もう一度、俊也に会いたい。


私は弾かれたように玄関へと走り、そしてドアを押す。


しかし、ドアは無情にも動かない。


どうやら、この世の物には干渉できないようだ。

触っている感触はあるのに。

動かせない。


「どうしよう......」私はドアからそっと手を放す。


しかし、こういう時の頭の回転は速いものだ。

私は、両親の部屋の窓がいつも開いていることを思い出す。

そして、すぐさま私は二階へと駆け上がり、両親の部屋へ向かった。


階段を上り終え、部屋に入ると父がいた。

私は驚き、部屋を出るが、すぐにその必要はないと気づき、再び部屋に戻る。

父はベットの上にずっと固まって、微動だにしない。


私はそんな父のもとへ行く。


父はしわしわになって色あせた画用紙を握りしめて、声を殺して泣いていた。


「お父さん......」


私は父が持つ画用紙へと視線を移す。


画用紙は涙で濡れていて、そこには、

“ ぱぱへ ぱぱ、だいすきだよ りんより”

と幼い字で書かれてあった。


「これって、私が幼稚園の時に書いたやつ.......」


私は何も言わず、そっと、父を後ろから抱きしめた。

きっと、父には分からないだろうけど.......。



私は父からそっと離れ、そして、窓に足をかけた。

外から入り込んでくる風が、私の髪をなびかせる。


私がここから飛び降りれば、もう家の中には入れない。


もう父にも、母にも会えない。


私は目をつぶり、大きく深呼吸をする。


「今までありがとう」


そう言い、私は飛び降りた。



風が私の体を引き裂くように吹く。

遠くの日々の思い出が、走馬灯のごとく蘇った。

不思議と怖さは感じない。


もう死んでいるのだから飛び降りたところで死なない。

私はひどく落ち着いていた。



そして、再び地に足がついた私は、最期に俊也に会うため、

夜の街を駆けだした。


最愛の人に会うために.........。


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