第六話
遅くなってすみません!
魔族が跋扈する村を壊滅し、占領に成功した第三部隊隊長であるレイブラは王への報告のため謁見部屋の扉の前に来ていた。
だが、成功したとはいっても部隊への損害は大きく、300人のうち6割の兵を失ってしまったことによって王の信頼を失い、最悪斬首なんてこともあることから謁見の前から気を重くしていた。
(今回はこっ酷くやられたな...しかし、奴らは他と比べると段違いに強かったな。こちらの過剰戦力ともいえる程揃えられた部隊と、奇襲攻撃がなければやられていたのはコチラだった。今回勝てたのは奇跡ともいえるか...おっと、そろそろ行かないとな)
兵の急かすような視線に気づき、再び歩を進める。
「行くか...」
改めて服装を整えたレイブラは扉の前に控えていた兵に視線を送り、扉を開かせた。
扉を開けるとそこには意識せずとも跪きたくなるような威厳を兼ね備えたバルナ王国国王であるヴァルク・バルナが玉座に座していた。
玉座までの距離を半分程歩き、跪いたレイブラはいつでも王の元に駆けつけれるようにするため脇に備えている騎士をちらりと見た。
(さすがは騎士様だ。やはりそこらの兵とは比べ物にならない力を持っているようだ。俺が相手すれば間違いなく負ける。良くて足止め程度だろうな)
騎士はこの国の上位戦力であり、一人で1軍に匹敵すると言われている。そんな騎士と闘い、足止めが出来るレイブラも十分強いと言えるのだが
騎士となったものは、王から直々に授与される白銀の鎧を身に着けており、それが騎士としてのシンボルとなっている。
「レイブラ、先の戦での勝利ご苦労であった。これで我が国の前線は広がり、より有利な立場に立つことが出来るだろう」
「はっ、身に余るお言葉でございます」
「ふっ、そう謙遜するな。今回の相手は少しばかり厄介者が多くてな。他の国も中々攻めることが出来ずにいたのだ」
「そうですか...」
褒められた事でこれは何事もなく終わりそうだと思い、ホッとしていると再び王が口を開く。
「だが、魔族との戦において敗戦はもちろんの事、互角であってはならないのだ。バルナ王国はいつ如何なる時も強者であり、支配者であり、そして覇者でもある。故に我らは常に相手を圧倒し、蹂躙せねばならない。レイブラ、今回は許すが次はないぞ?」
そう言い、射殺すような視線を向けられたレイブラは背筋がぞっと冷えたような感覚を覚え、暑くもないのに汗が頬を伝って落ちていった。
「はっ、寛大な措置に感謝します!次こそはバルナ王国の名に恥じぬような働きを約束します!」
「下がってよいぞ」
「はっ、それでは失礼します」
そう言い、レイブラは謁見の間を出ると同時に安堵の息を吐いた。
「ふぅ~...首は繋がったままか...これから忙しくなりそうだな......誰か変わってくれないかね」
軍の再編成や、作戦の反省、修正、遺族への対応など、これからしなければならない事を想像し、思わずそう口にした。
そんなレイブラに対し後ろの兵士は微笑んでいたが、レイブラはそれに気づかずにそそくさと立ち去っていった。
★★★
レイブラが去った謁見の間では、水を打ったような静けさで包まれていた。
そこに静寂を壊す声が部屋に響いた。
「くくくっ」
王の含み笑いによって、部屋中の視線が一点に集められた。
普通ならば不審がる者がいてもおかしくはないような突然の笑いだが、ここにそれを不審がる者はいなかった。
「あはははははっ!これで....!これで目的にまた近づいたぞ....!あと、3歩...いや、あと2歩ほどか?くくくっ...もう少しだ...あぁ、楽しみだ。あの時の借りは返させてもらうぞ...!」
先程までの威厳のあった王とは打って変わって少年のようなはしゃぎ方をしているが、その目には憎しみの炎がギラギラと灯っていた。
「ーーーさてと、これからはお前たち騎士の出番は多くなることだろう。敵対する者は殺せ。そして、魔族共には残酷な死を送ってやれ。それに今回の戦闘によって、多くの素材が集められたことだ。新たな武器を作っても良いぞ」
「感謝いたします!そして必ずやご期待に応えてみせましょう!!!」
そのやり取りを終えると王は脇の通路に消えていった。
人間、魔族、エルフ、ドワーフの国から成る勢力とは異なる新たな勢力が生まれていることにこの時はまだ誰も気づいてはいなかった。




