第五話
それからどれ程時間が過ぎただろうか
村を覆う炎は、食らうものがなくなってきたせいかだいぶ沈静化していた。
代わりに、村の闇を照らし生命の活動開始を知らせる新たな光が射している。
大切な人たちの遺体を傷つけないため、外の安全な場所に移動していたグレイは彼らの傍で寝ていた。
ーーもしかしたら寝て目が覚めたら、全部ウソだったという現実を期待して…
だがすべては、紛れもない真実だった。
朝日によって、目が覚めたグレイは寝ている三人を起こそうと上体を起こした。
隣を見ると、目を閉じたネルがいた。
一瞬心臓が跳ね上がったが、あれは夢だったんだと思い込み、何とか抑えた
「珍しいなネル…お前が俺より寝てるなんて…ほら起きろよ、朝だぞ。……母さんも早く起きて美味い飯作ってくれよ…お腹すいたよ。父さんも…ほら起きて…っ!?」
真実を知りたくないと思い、なるべく損傷がないところを見ていたグレイは首のない父を見てしまい、一瞬時がとまった。
(ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ……あれは夢だったんだ!)
見たくはないと思いつつ、三人の体に顔を向けた。
それは年端も行かない少年に残酷な現実を突きつけた。
「あぁ…夢じゃなかった……もう皆はいないんだ……うっ…うぅ」
グレイは糸が切れたようにその場に崩れ落ち、一人泣き続けた…
しばらくして、涙が枯れ、茫然としているところにアイギスたちが現れた。
そしてグレイの目線に合わせるようにしゃがみこむと
「立つんだグレイ。ここでいつまでもそうしててもどうしようもないだろ」
「でも…俺はこれからどうすればいいんだよ…帰る家も、村も、家族もぜんぶなくなったんだ…」
「全部じゃない。まだ俺たちがいるだろ?」
「……」
「グレイ、俺たちと共に来て人間たちに復讐しよう」
「人間?復讐?」
「あぁ、よく見てみろ。そこら中に人間の死体があるだろう?この惨劇は人間によって引き起こされたんだ」
グレイは必至で気づかなかったが、辺りには人間の死体が転がっていた。
「確かに人間がいたようだが……復讐なんてして何になるんだよ、死んだ人が生き返るわけでもあるまいし…」
「確かに死んだ人は生き返らない……だが俺たちの大切な人たちをこんな目に遭わせたやつらが、幸せそうな面をしてのうのうと生きているのが許せるのか?」
グレイは、ハッっとした顔で応えた
「許せない…」
そう言葉にすると源泉のように憎悪が湧いてきた。
「あぁ、俺も許せない!だから俺は、人間をこの世から駆逐することにした…その覚悟はつい先ほどしてきた」
そう言ってアイギスは血濡れた拳を見つめた。
グレイは立ち上がりながら言う
「俺も人間が憎い…だから俺をその復讐に連れて行ってくれ、たのむ」
「頭を上げてくれ、もともと俺たちはお前と一緒に行くつもりだったんだ。なっ、みんな」
そう言って振り返ると、目を赤く腫らした皆が頷いていた。
「そうか…ありがとう」
目じりに涙を浮かべたのを見て、アイギスは笑みを浮かべた。
「よし、それじゃあ行こうか」
「行くってどこにだよ?」
「私が見つけた人間が言ってたの、もうすぐここを国の一部にするため仲間が大勢来るって」
「だからここからすぐに離れないといけない」
「おいおい、待てよ!人間を殺しつくすんじゃなかったのかよ!」
「馬鹿ね、今の私たちじゃ嬲られて殺されるのがオチよ」
よほど悔しいのかアリスが握る手から血が流れている。
「そうだ、だから俺たちはもっともっと強くならなければいけないんだ」
(もう誰も失わないように……見ててくれ皆、俺が仇をとってやるからな……)
そして俺たちは森の奥へと歩いて行った




