第一話
俺ことグレイは席に着き、食事が来るのを今か今かと待っていた。
俺の周りには、俺と同じように食事を待っている父さんと、スプーンとフォークを両手に構えた状態で待っている妹のネルがいた。
しばらく待ち、ネルがもう我慢できないとばかりに腹を鳴らしたとき、母さんがやってきた。
「はーい、お待たせ」
その手には俺たちが待ち望んでいたものがあった。
「待ってました!」
「おぉ!今日も美味そうだな!」
「はやく!はやく!いただきますしよ!」
「ふふっ、そうね。それじゃあ食べましょうか」
「「「「いただきます」」」」
「やっぱり母さんの料理が一番うまいよ」
「うん!ははふぉふょうひふぁひひふぁんはよ(ママの料理が一番だよ)」
口内を食べ物でいっぱいに満たしながら喋るネル。
「こらこら、ネル、もっとゆっくり食べないと。でも、ありがとね、ママ嬉しいわ~」
「俺の料理も負けてないけどな!」
そう言って、胸を張る父。
本人は自信があるようだが、はっきり言って母と比べると天と地ほどの差がある。
というのも、父は何を作るにしてもどういうわけか味が全くしないのだ。
味がしない食べ物なんて当然不味い。父はそれが美味いと感じているから、まったく味がしないというわけではないのかもしれない。
だが、母やネルは俺と同じようなことを思っていたようで
「パパの料理はまずいから嫌い!」
とネルがはっきり言い、母は苦笑いを浮かべている。
「そんなぁ!あんなに美味いのに・・・」
「ハハハハ!」
父が落ち込んでるのが可笑しくて、俺たちはつい笑ってしまった。
「そんなに笑わなくてもいいだろう?」
「ごめんごめん」
「なら次はもっと美味い料理作ってやるからな!」
「やだ!」「遠慮しとく」「私もやめとくわ」
「お前たちに拒否権はない!はっはっはっ」
「やだやだやだやだ!」
「ネル・・・そんなに否定しなくてもよくないか?パパ泣いちゃうよ?」
そんなやり取りを見ながら俺は感慨に耽っていた。
(幸せだ・・・。つくづくこの家に来てよかったと思う)
実は、俺とこの家族には血のつながりはない。
それは、見た目からでも明らかだろう。
父さんたちは皆、頭に二つか一つ角を持っている。これは一般的な魔族の特徴で、高位になればなるほど角は多く、立派なものとなる。
一方で俺は、一つの角も持っていない。一つの角も持たない魔族はいない、したがっておれは魔族ですらないといえる。俺が例外という線は否定できないが・・・
だが俺には角とは別の特徴があった。
それは、純白の翼だ。純白の翼をもつ生物は、グリフォンやホワイトドラゴンぐらいでほとんど確認されていない。
俺がそれらの種族とは考えにくく、結局自分が何なのかは未だにわかっていない。
それだけでも血がつながっていないことは分かるが、確信を持ったのは両親から打ち明けられた時だ。どうやら俺は、赤ん坊の時に山に捨てられているのを発見されて、いまの両親に拾われたらしい。
「グレイどうした?さっきからずっと固まっているが・・・」
「いや、何でもないよ。ただ・・・そうだな、ありがとう」
父と母は何のことか分からず顔を見合わせるが、結局わからなかったようで
「とりあえず食べましょうか」
と食事を促した。
「あっ、そうだ、俺これからルークたちと湖に行ってくるから!」
食事が終わり、この後は特にすることもないのでルーク達と約束していた湖に行くことにした。
「分かった。気を付けて行ってくるのよ」
「魔物がいるかもしれないんだから、ちゃんと装備していけよ」
「あぁ、分かってるよ」
「お兄ちゃん!私も行きたい!」
「ネルにはまだ早いからお留守番だ」
「えー」
「もう少し大きくなったら一緒にいこうな?」
「うん!分かった!」
「よし、いい子だ。じゃあ、いってきます!」
そう言って俺は家を出た・・・
ーーこれが家族との最後の思い出だった




