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スキル判明(今更ながら)

…森で出会った謎の少女、ハルヒに連れて帰られてから、一週間が過ぎた。


間が空いたので整理すると、ハルヒはどうやらハルヒ・ティナマルといって、最初に俺を思いきり拒否してきたリュカ・ティナマルの弟子らしい。苗字が一緒だから親子かも。

出会った日ハルヒが言ったように、確かにリュカは首輪をつけた俺を見て拒否を諦めたようだった。一日目だけは外で寝かされたものの、二日目には俺がいる環境に慣れたらしく、ハルヒと一緒の部屋に寝ることを認めてくれた。

今では俺のふわふわボディにめろめろで、気を抜くとしょっちゅうふわついてくる。若い美人なお姉さんならともかく、爺いに触られる趣味はないので早々に逃げた。

…ちょろすぎだぜ爺さん。


言葉が分からないのが問題だったが、それは俺の首輪が解決してくれた。

そう、首輪の、あの青い石…クリスタルだ。

あの日、ハルヒに首輪を着けてもらった直後、俺の脳内にとんでもない音量で怒り狂った声が聞こえてきた。


『──貴様ぁ、我輩の体を返せ!!』


いや、ビビった。

大声で叫んで周りの人間を昏倒させ、驚きで固まっているハルヒを余所目に首輪をはずそうとのたうち回り、道路の煉瓦を粉々に砕くほど驚いた。


…まだ他の魔獣とやらにあった事がないので比較が出来ないが、声の主によると俺は世界のバランスを崩す勢いで強いらしい。例えそれが生まれたばかりの子供であっても。


声の主は「ヴァルナ」と名乗った。


『貴様の体は元々我輩のモノであったのだ。』


一騒動去って「師匠になんて言おう…」と肩を落とすハルヒと共に帰る道すがら、ヴァルナは粋揚々と語った。


「はぁ」


『…我輩の主であったカトラが、我輩の魂をこのクリスタルに封じ込めたのだ。そこに転生者である、余所者の、貴様の魂が入り込んだのだ。』


「ほう」


『…その、体を取り返してやりたいが今の我輩の力では無理だ。だからせめてその体が貴様のヘマで滅びることが無いようにサポートしてやらんこともないぞ』


「ああ」


『……カトラも転生者だったのでな、我輩はこのように異世界の言葉が話せる。お主のその、いかにもテキトーな相槌もよーく分かる…』


「はい」


『あの、…お前は我輩の言葉を理解しているのか!?テキトーに返事をしないでくれ!』


急展開についていけないだけだ。決して聞くのが面倒だった訳ではない。多分。


慣れてみればなんということはない、俺より物知りな子供のようなものだ。ヴァルナは煩くて寂しがり屋だった。


『なにか無いのか!?体を返せって言われてもどうしようも無いとか、しゃべり方がおかしいとか…』


「じゃあしゃべり方おかしくないか?」


『こっちの方が偉く聞こえるだろう?いや敬語を使え!我輩は1392歳だぞ!』



ちなみに俺は声を出してない。意思干渉というスキルによって話しかけているのだとヴァルナは言った。まあ今の体じゃ俺はそもそも人語も喋れないんだけど。


二人で(いや一人か?)ぎゃあぎゃあと喋っていると、ハルヒが振り返った。


「アヒシャトゥ、ハルヒ。エヌキショロヨ、アラエコック!…フィヨル!」


やっぱりまだこの世界の言葉は分かんないな。フィヨル、と俺が名付けられたらしいのは分かったんだが。適当に返事をしようと思いかけて、ふとヴァルナの事を思い出す。


「なあ、今あいつなんて言ったか分かるか?」


『私はハルヒ、これからよろしくね、フィヨル。だ。』


ヴァルナはさらりと返してきた。こんなのなんでもありませんよ、と言いたげな口調が腹が立つが、なるほど役に立つ。

これからよろしくね、か。


「フィ!」


ハルヒに声をかけてから、「お前すごいな」とお世辞を言っておいた。こいつからしたら母国語だから出来て当然だけどな。


『そ、そうか?あ、いや、どうということはないぞ!我が郷土の言葉だからな』


まったくもってその通りです。


「いや凄い凄い。俺のサポート、これからよろしくな。お前がいたら安心だよ」


『…仕方あるまい。体が戻るまでの間だぞ!仕方ないからサポートしてやる。仕方なしだが感謝すれば良かろう!』


ちょっと煩かったのでスルーした。ひとしきり堪えきれないように笑いを放ったヴァルナが、ふと思い出したように笑いを止めた。


『あ、それからフィヨルというのはな、幸福の子、という意味だ。良い名を貰ったな。』


「へえー。そんな意味あんだな」


『うむ。ヴァ(幸福の)・ルナ(子)。ルナには他にも意味があるが』


幸福の子か。随分な名前を貰ってしまったが、確かに見た目でいえば似合っている。白くてふわふわだしな。


『…あの子はお主の主人になるであろうな。うむ、間違いない。』


「主人?…てのがよく分からないんだが、なんでそんな確信もってんだ?」


『む、なんと言うか…うーむ…我輩は未来予知というスキルを持っているのだ。なんでも予知できる訳ではないが、この世界には初めから決まっている出来事が存在するのだ。』


お主の世界で言うところの「運命」というやつだ、とヴァルナは言った。…思ったより面倒な解説がきそうな予感。軽い気持ちで聞いただけなんだが。


『それに出会うと、事前に…直感で分かるのだ。例えばハルヒが我輩を拾ったのも偶然ではない。お主が我輩を選んだのもすべて運命だ。我輩の魂はその体から離れられぬという定めなのだ。』


「いや、俺がこの首輪を選んだのはもう一つがあんまりにもあんまりだったからだけど」


『それも含めて運命だ。あらかじめ決められた運命にどう出会い、どう生きるかが大切なのだ。』


良いこと言うじゃねえか。しかし、自分の意思で選んだと思ったんだが、そういうものなんだろうか。分からない事はまだ沢山あるが、この世界では多分宗教的なものじゃなくてそれが常識なんだろう。スキルになってるってことは、運命が実在するって事だしな。

もしかしたら俺がハルヒに出会ったときに感じた「付いて行かなきゃならない」「動き出さなきゃいけない」ってのも、未来予知の効果なのか。


『だから言えたのだ。あの子はお主の主人になる。間違いないぞ。』


「…この子が?ごめんやっぱ聞くわ、主って何?俺あの子より大分年上なんだが」


『儀式を交わして魂を共有するのだ。我輩とカトラのようにな。まさに一心同体だ。共に生き、共に戦い、共に死ぬ。我輩の名、ヴァルナはパートナー、という意味だ。まさに主人と使い魔の事を表している。』


「…なるほど。」


ちょっと理解が難しいが、ポケ○ンみたいなもんなのかね?俺は。

ヴァルナはもう少し喋りたそうだったが、とりあえず俺は分かったことにして話を終わらせたのだった。


…で、今に戻る。

住めば都、というか、一週間ずっと話を聞いてるとだんだんこの地の言葉が理解できるようになった。

ヴァルナの通訳のおかげである。


「フィー、出掛けるよ。一緒に行こう」


ハルヒが俺の名を呼んだ。始めはフィヨル、フィヨルと呼ばれていたが、最近は略されてフィーと呼ばれている。俺の鳴き声もそれだし、そっちの方がしっくりくるかもな。


立ち上がってハルヒの後に続く俺の首で、ヴァルナが唸った。


『呑気だな…これでは飼いドラゴンと変わらぬぞ。なぜ早く契約を交わさぬのだ?』


またそれか。


「別に俺はこれでも良いよ。なんなら楽で丁度良いし。」


『ふん…お主がどう生きるかは知らぬがな、折角強く生まれたのに勿体ないぞ。』


「いや、ちょっと声がでかくて力が強いだけだろ。スキルも持ってないのに見たことない魔物やら戦えないって」


『…む?スキルがない?いや、結構あるぞ?』


は?

思わず動きを止めた俺を、ハルヒが怪訝そうに眺めた。


「…フィー?疲れた?ちょっと休もうか?」


慌てて首を降る。急ぎ足でハルヒに追いついてから、「どういうことだよ」とヴァルナに聞き直した。


「スキルって持ってても気づかないもんなの?」


『いや、普通の魔獣は気付くぞ。お主は異世界の者だから“持っている”という感覚がないのだな』


「…ちょっと待て、じゃあ俺無力すぎないか?折角強く生まれたのに何一つ活用出来ないってこと?」


『はっは、まあ落ち着けフィー。心配せずとも我輩がサポーターとしてしっかりお主に教えこんでやる。』


なんか知らんがこいつにフィーと呼ばれるのは無性に腹が立つな。…機嫌を損ねそうだから言うのは止めとこう。大事な局面だし。


「…分かった、じゃあ教えてくれ。俺はまずなんのスキルを持ってる?」


『まず我輩が持っている意思干渉、未来予知。どういうものかは教えただろう?』


あ、なるほど。確かに魂のこいつが持ってるってことは体が覚えてるよな。


『それから地形感知、熱源探知、転身、飛行、咆哮、威圧、隠密。このままの暮らしを続けるとしたら使うのはこれくらいだな。』


「…充分ある気がするんだが、このままの暮らしじゃ使わないだけでスキルはもっとあるってことか?」


『あるぞ。まずリーダースキル、絶対王者。副リーダースキル、白龍の守護。戦闘スキル、火花。以上。』


「は?」


ちょっと待て。


「…戦闘スキル、もっかい言ってもらっていいか?」


『戦闘スキル、火花。以上だ。』


なんとも思っていないようにヴァルナはさらりと言い直した。いや落ち着け俺、このスキルが絶対的に強い可能性もある。


「…それ一回やってみて良いか?」


『良いぞ。全然歩きながらでも出来る技だ。』


「………。」


今の、フラグじゃないよね?不安しかないんだが。


『やろうと思えば出来るはずだ。お主が初日に人間を昏倒させたのも、咆哮というスキルによるものだ。やろうとすれば体が覚えているから自然と出来るものだぞ。』


「分かった。じゃあ…」


───火花。


瞬間、バチンと俺の毛から火花が飛び散った。バチバチと白く光る閃光が身を纏う。


「…え!?なになに、フィヨル?何それ!!」


「フィーーー!!」


驚いたハルヒが近付いてくるのを慌てて止める。(仮にも)戦闘スキルを使ってる最中に触られるのは流石にまずい。


『体に電気を身に纏うスキルだな。このまま敵に体当たりして感電させるのだ。持続時間は10分ほどだが、自分で引っ込めることも出来るぞ。』


こわっ!ハルヒに触らせないで正解だった。頭の中には骸骨になってバチバチ光る感電人間のイラストがコミカルに浮かんだが、多分そんな優しいものじゃないんだよな。

よし、…引っ込め、引っ込め…。


「え?終わり…?」


もとの状態に戻った俺を見て、ハルヒが肩を落とした。あんたの為だよ。

そんな意味をこめてじっとりと見上げると、流石にもうやってくれないと察したらしく、ハルヒも軽く息をついて歩き始めた。


「…そうだね、早く今日の夕食の材料買って帰ろっか。フィーは夕飯何が良い?」


『グァマの丸焼きだな』


ヴァルナが勝手に答えた。いやいや、聞こえないだろ。グァマというのは先日食べたもので、要するに鶏みたいなやつを丸焼きにしたものだ。なかなか美味しかった。


…夕飯か。答えようにも喋れないしな。

ハルヒもそんな事は分かっている。女の子がぬいぐるみに話しかけるようなものだ。まあ元人間としては話せずとも喋りかけてくれるだけありがたいけど。


「やっぱグァマかなー…ていうか、フィーなんか大きくなった?まだ成体じゃなくて子供なのかな」


…は?


『グァマ!』と声を昂らせるヴァルナの声を聞きながら、俺はふと自分の体を見つめ直した。

なるほど、もしかしたらちょっとでかくなってるかもしれない。しかし考えてみると、最近寝るときハルヒの部屋が狭く感じるような…。でも首輪はキツく無いんだよな。気のせいか。


「気のせいか。」


俺と同じタイミングでハルヒがぼやいた。なかなか適当なとこがあるな、この子…。俺も大概だけど。


しかし今日はなかなか色々発見したぞ。


ハルヒについて夕焼け色に染まり始めた町に向かいながらだが、とりあえずおさらいしておこう。


俺のガイド役になった首輪のクリスタル、ヴァルナ。

所有スキル

意思干渉 未来予知 地形探知 熱源探知 転身 飛行 咆哮 威圧 隠密


リーダースキル 絶対王者


副リーダースキル 白龍の守護


戦闘スキル 火花


最後に俺は転生者で、名前はフィヨルになったらしい。

フィヨルもハルヒも名前の感じが好きってだけで決めました。…。

ゲームのスキルとかアイテムとかあまり詳しくないのでただいま猛勉強中です。

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