龍の世孫
空は抜けるように青い。狼煙が白煙を上げて虚空に舞う。平陽最大の河川である光河沿いの広野に龍五軍の旗がはためいている。中心には巨大な天幕。そして小さな天幕が点在している。巨大な天幕の前には試合場。天幕の片側は解放され、御簾が降りている。天幕の内から試合を観覧出来るのだ。御座は御簾の内に設けられ、主の姿を待つ。
銅鑼|の音が響く。音曲と共に御車が現れる。龍軍府の総督元帥が出迎え、平伏する。御車の内からは金糸の竜紋を背負う男。即ちこの龍王国の主、龍王陛下の出御である。御車に随伴するは寵妃、廉嬪。元来、龍王の妃嬪が後宮の外に出ることは滅多にないが、今回ばかりは廉嬪出御にも理由があった。廉嬪は一軍将軍、仙孝の母親である。
龍王の御車の後ろには聖龍童子・修の車が連なり、その後ろには、修の嫡子、世孫・八鹿の車が続いた。龍王、聖龍童子、世孫が順に降り立つと龍五軍将軍は並び立ち騎馬を御前に進め、跪き、口上を述べた。龍王は頷き、御簾の内に着座した。五軍の上位官はそれぞれの軍色、軍紋の甲冑を身に纏うことができる。例えば一軍の甲冑は鈍色菊水紋、二軍は紺色睡蓮紋というように。とりどりの色を纏う武人の姿は壮観であった。