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最強陰陽師の異世界転生記 ~下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが~  作者: 小鈴危一
五章(聖皇女と勇者編)

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幕間 ガル・ガニス、ロドネア近郊にて


 ガル・ガニスは逃げていた。


 あの死地から一度の転移で、ロドネアの外に出た。

 そこから何度も転移を繰り返し、城壁が霞むほどの場所にまで至った。

 魔力が尽きてからは、ただ全力で走った。

 まださしたる距離を進んでいないにもかかわらず、息が切れ、足がもつれる。だが、止まれない。


「クソッ……チクショウ……ッ!」


 立ち止まることを、恐怖が(はば)んでいた。

 あの場で自分が、あの少年に立ち向かおうとしていたなど、今となっては信じられない。


 ゾルムネムは生きていないだろう。

 転移の寸前に見た、灼熱の赤い波濤が脳裏から離れない。


 仲間は全員死んでしまった。

 あれほど強かった皆が、あの少年一人に何もできなかった。


 なぜこんなことになってしまったのか。

 あんな存在を、誰が予測できたというのか。


「アイツが、ハァ、魔王だと……ッ? そんな……そんなバカなことが……ッ!」


 ゾルムネムが、なぜその事実にたどり着いたのかはわからない。

 だが今となっては、このことを知るのは自分ただ一人だ。

 悪魔族の王に……いや、あらゆる種族に、この危機を知らせる必要がある。

 これが、今の自分に残された使命だ。ゾルムネムの遺志を、なんとしても果たさなければならない。


 その時ふと、ガル・ガニスは前方に注意を向けた。

 はるか先の街道に、ロドネア方向へ向かう馬車が見える。

 行商人だろうか。荷馬車ではあるが、護衛の類は連れていない。


 ゆっくりと気持ちが落ち着いていくのを、ガル・ガニスは感じた。

 魔族領まではまだまだ遠い。この先、何度も補給をする必要がある。もはや一人である以上、たった一度の機会すらも逃せない。

 加えて、今日はもうすぐ日が暮れる。ロドネアからもかなり離れることができた。さすがの魔王でも、今の自分の位置を特定し、この距離を追いすがることはできないだろう。


 ひとまずあの馬車を襲って食糧を調達し、夜営の場所を探す。

 今はそれが最善だ。


 馬車へと駆けながら、ガル・ガニスは魔法の炎を浮かべる。

 もう大規模な転移はできないが、簡単な火属性魔法程度なら問題なく使える。そして、今はそれで十分だ。


 ガル・ガニスは、炎を放とうとして――――、


「ご……ふ……っ」


 唐突に、口から血を吐いた。


 浮かべていた炎が消滅。悪魔族の青年は、足をもつれさせて地面へと倒れ込んだ。

 土を噛みながら、鋭い痛みの走る胸に目をやると――――まるで長大な刃で貫かれたかのように、縦に走る線状の傷から血が流れ出している。


「なん……」


 いつ、どのようにつけられたものなのか。ガル・ガニスにはわからない。

 だが――――誰によるものなのかは、想像がついていた。


「なんだ……なんなんだ、アイツは……あれが、魔王……?」


 血と共に、意識が流れ出ていくのを感じる。

 全身を寒気が覆っていく。


 ありえない。

 伝承でも、魔王は……このような力など、持っていなかったではないか。

 あまりに異質すぎる。

 まるで――――住まう世界からして、異なるかのような。


「あの、魔王は……何、者……」


 最期の呟きから、ほどなくして――――悪魔の呼吸が止まった。


 勇者を討つべく旅立った魔族の英雄たちは、こうして全員が死に絶えた。

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