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最強陰陽師の異世界転生記 ~下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが~  作者: 小鈴危一
十章(母の記憶編)

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幕間 皇帝ジルゼリウス・ウルド・エールグライフ、帝城にて


「勇者とは、かつて大陸中央に存在した古代国家が残した、怨念の遺物だ」


 帝城の地下に、皇帝ジルゼリウスの声が響き渡った。


 そこは、書庫だった。

 書庫と言っても、本や羊皮紙の類は収められていない。この地下書庫に収蔵されているのは、湿気や浸水に強い、碑文の類だ。

 自然の岩に手彫りで刻まれた物、土属性魔法で生成された物、はたまた詳細が一切不明な物までその種類も大きさも様々だが、いずれも古く、貴重なものばかりだ。

 碑文そのものはもちろん……そこに刻まれている情報も。


「捕虜として魔族の奴隷となり、その後別の国に逃げ出した住民の一人が語っていたらしい。巫国の王族のみに伝えられ、滅亡するその時に行使されたという、転生の秘儀のことをね。今ではどの国にも伝えられていない話だけど……碑文に刻まれているということは、当時は民の間で話題になったのかな? たしかに、ちょっとわくわくする話ではあるね」


 魔道具の灯りが照らす、碑文の群れに囲まれた空間を、皇帝は歩いていく。

 足音は、二つ響いていた。

 皇帝の後ろには、深紅の外衣を纏うゴブリンの老婆が、錫杖を突きながら続く。


「わくわく、トは……キヒッ、ばあやには、理解の難しい概念にゴザいます」

「秘められたものの存在が垣間見えたとき、人間は心躍るものなのさ。それが壮大であるほど、余計にね。もっとも……」


 皇帝は苦笑する。


「ぼくの立場では、わくわくしてばかりもいられないけどね。帝国にとって都合の悪いものであれば、それがどれほど壮大で、美しいものであったとしても……強引に暴き立て、消し去ってしまわなければならないこともある」


 皇帝は立ち止まる。

 その目前には、一つの碑文が鎮座していた。

 不思議な光沢のある材質不明なその石は、明らかに魔法によって生成されたものだ。見上げるほどに高い、巨大な三角柱。その三つの面には、同じ内容がそれぞれ異なる文字で記されている。


「勇者は、魔族への復讐を託された英雄の亡霊だった。では……魔王とはなんなのか」


 碑文を見上げながら、皇帝は呟く。


「勇者の対となる存在が、なぜ魔族側にも現れたのか。彼らはどうして、相争う定めにあるのか」


 皇帝の目は、碑文の古代文字に注がれている。

 疑問の答えが、そこに記されていた。


「彼らの喧嘩に巻き込まれるのは、もうたくさんだ。幼稚な英雄譚は、いい加減に終わらせようじゃないか」


 皇帝は碑文から目を離し、ゴブリンの老婆に笑いかける。


「始めるよ、ばあや」

「キヒッ……スベては、陛下のご意志のままに」


 声は碑文の群れに反響し、やがて消えていった。


これで十章が終わりました。

予定では次の章で完結します。


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