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最強陰陽師の異世界転生記 ~下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが~  作者: 小鈴危一
一章(転生・学園入学編)

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第二十話 最強の陰陽師、入学式に出る


 数日後。

 逗留していた宿に正式な合格通知が届き、ぼくとイーファは晴れて学園ヘの入学が許された。


 で、今日はその入学式。


「ね、セイカくん……これ、スカート短くないかな」

「そ……そんなことないん、じゃない?」


 短い。

 でも制服のデザインだからね……。

 領地ではあまり見なかったけど、どうやら大きな都市で流行っているようだ。


「今日から寮生活だけど、わたしは男子寮に入れるのかな」

「無理だと思うよ」

「従者とはいったい……」

「ここではただの学生だからなぁ」


 とか話しながら、夜の学園を歩く。


 この世界の夜は、月が二つあるおかげで明るい。

 ただ今夜の学園は、それに輪を掛けて明るかった。

 魔法のぼんやりとした灯りがあちこちに点され、道や学舎を照らしている。


 ぼくは足を止めた。


「イーファ」

「なに?」

「あの辺りに精霊はいる?」

「えっと……あっ」


 イーファが茂みに駆け寄る。


「コウモリ……」

「コウモリ?」

「これ、闇の子……闇属性の精霊だよ。珍しい。なんでこんなところにたくさん……」

「……たぶん、これのせいじゃないかな」


 ぼくは茂みをかき分ける。

 そこにあったのは、青白い塗料で書かれた大きな魔法陣だった。


「これって……」

「イーファ。闇の精霊は連れて行けそう?」

「う、うん。セイカくんと見つけた魔石の中に、闇の子が好きなのもあったから」

「ならよかった」

「……セイカくん、なんでこんな魔法陣があるって知ってたの?」

「勘かな。ぼく、昔から勘が鋭いんだ」

「……そうなんだ。ね、この魔法陣、どうする? なんかすごく……いやな感じがするんだけど」

「学園のものだろう? 精霊を連れていくのはともかく、勝手にいじるのはまずいよ。何に使うかもわからないのに」

「うん……そうだよね」

「ほら、会場に急ごう。まだ時間はあるけど、迷ったりしたら大変だから」


 そう言って、ぼくは歩き出す。

 イーファもちゃんと後ろからついてきてるようだった。


 それにしても……いやな感じ、か。

 ぼくもまったくの同感だ。

 こちらの魔法陣についてはまだまだ勉強不足だが、あの力の流れはたぶん……あれだろう。


 ただ――――なんとなく、事態はぼくにとって都合のいい方向に転がる気がする。


 こっちは本当に勘だった。



****



 入学式の会場は、大きな講堂だった。


「わぁ、広……料理もすごいたくさん……」


 新入生の数も多い。二、三百人くらいか?

 料理は立ったまま皿に取って食べるらしい。変わったパーティだなぁ。


「って、セイカくんもう食べてるの?」

「イーファも食べられるうちに食べておいた方がいいよ」

「平民みたいなこと言うね……」


 そのうち司会が何か言い、式が始まった。

 つつがなく進行していく。


「セイカくん、ちゃんと話聞いてる? ほら、次はあのアミュって子が挨拶するみたいだよ」

「んっ?」

「首席合格だったからかな」


 見ると、壇上で赤い髪が揺れていた。

 凜とした、よく通る声が響き渡る。


「――――今日、みなさんがどのような理由でここにいるのか知りません」


 ぼくは皿を置いた。

 あー、今来るのか。

 タイミングがいいんだか悪いんだか……。


 あらかじめ何匹か飛ばしておいた式神の視界を探る。

 フクロウはカラスと違って像がぼやけるが、その代わりに夜目が利く。


 いたいた。

 って近いな。すぐそこだよ。


「あたしがこの学園に来たのは、ただ――――」


 そのとき。

 講堂の壁が――――轟音と共に吹き飛ばされた。


 会場から悲鳴が湧き上がる。


 講堂の壁は、一部が完全に破壊され大穴が空いていた。

 ぱらぱらと石材の破片が落ちる。

 白く舞う粉塵の向こうには、外が見えてしまっている。


 その穴から、黒く、巨大な影が姿を現した。


 身の丈は人の三倍はあろうか。

 漆黒の体毛に覆われた屈強な肉体。

 その顔は、牛とも山羊ともつかない奇妙なものだった。


「で……デーモンだっ!」

「レッサーデーモンが出たぞぉッ!!」


 生徒の叫び声。

 それと同時に、集団が一斉に会場の出口へ向かって逃げ出した。


「わわっ!」


 大勢の人の波の中、ぼくはイーファを太い柱の陰へと引き込む。

 このままだと人間に押し潰されそうだ。


 柱から顔を出し、敵を観察する。


 レッサーデーモンは三匹に増えていた。

 どうやら近くにいたやつ全員が講堂に入ってきたらしい。


 見た目は恐ろしい……が、雑魚だな。

 棍棒を振るっているが、動きがにぶいし、三匹も入ってきたせいでお互いの邪魔になっている。


 そうこうしているうちに、火炎や氷柱の魔法がデーモンへと浴びせられ始めた。

 大声で指示を飛ばしているのは先生か。応じる中には先輩らしき生徒もいる。

 魔法を食らったデーモンはひるみ、動きを止める。

 だけど……、


「……まどろっこしいな。何やってるんだ」


 時間をかけすぎている。あんな雑魚、どうしてさっさと倒さないんだ?


 仲間の陰にいたデーモンの一体が、魔法を放つ生徒達に向かって棍棒を振るった。

 もたもたしているからだ。死んだな。

 そう思いながら術を放とうとした時――――、


 赤い髪が、棍棒の下へと潜り込むのが見えた。


 剣が一閃。

 鋭い金属音と共に棍棒が大きく弾かれ、レッサーデーモンが仰け反る。


「戦えない奴はどきなさいッ!」


 アミュは叫びながら風の魔法を放ち、もう一体の目を潰す。デーモンの悲痛な叫びが上がる。

 流れが変わった。

 人間側が優勢に立ち始めている。もう大丈夫かな。

 まったく心臓に悪い。


 しかし、あのモンスターどもは妙だ。

 目つきは獲物を探すようだが、攻撃がにぶい。三匹という数も無駄に多いだけに見える。


 陽動か。いやもしくは……、

 先に手を出して反応を見る、威力偵察の類か。


 ま、なんでもいいや。

 さて喚んだ術士はどこだろう。

 学園中に飛ばした式の視界をすべて探っていく。


 ――――見つけた。あれか。


「イーファ」

「セ、セセセセイカくんどうしよう……っ」


 イーファが震えた声で言う。


「あ、あれデーモンだよ。まさか魔法学園に、こんなっ」

「本当にびっくりだよなぁ」

「軽いよっ! うう、わたしまだ死にたくない……」

「落ち着けって。あれくらい先生たちがすぐ退治してくれるよ。雑魚だし」

「雑魚!? デーモンだよ!? 一匹で軍の部隊が一つやられたことだってあるのに!」

「たしかデーモンにもいろいろあって、あれは一番弱いやつだったはずだから」

「でも雑魚ではないと思うけど……」

「いいかい、イーファ」


 ぼくは言う。


「しばらくはここに隠れていた方がいい。今出口は人がいっぱいいて危ないからね。デーモンはそのうち倒されると思うけど、いざとなったら躊躇なく魔法を使って逃げること。わかった?」

「う、うん」


 念のため式神を何体か置いていこう。

 それで十分だろう。


「セ、セイカくんは?」

「ぼくはちょっと用事があるから」

「えっ、用事?」

「何かあったらすぐ戻ってくるよ」


 イーファの目から隠れるように、柱の陰から飛び出す。


 そして。


 敵を見ている式神と(・・・・・・・・・)ぼく自身の位置を(・・・・・・・・)入れ替えた(・・・・・)

※式神(フクロウ)

フクロウの眼球には輝板と呼ばれる反射板があり、網膜を一度通った光を再度利用できる。暗い夜でも視界を確保できる一方で、像が結びにくくなるため明るいところでの視界はよくないとされる。式神は術者の定めた標本を参照して機能するため、その生物とだいたい似た能力を持つ。

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