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最強陰陽師の異世界転生記 ~下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが~  作者: 小鈴危一
八章(七人の王編)

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第十七話 最強の陰陽師、魔王城に着く


 すべての王を集め終えた、その翌日。


「……ここが、そうなのか」


 ぼくは、古びた巨大な城を前にしていた。

 帝国の城とは建築様式が違う。なんというか、禍々しい造りだ。


「『ええ、その通りです魔王様』と、王は仰せでございます」


 アトス王の言葉を伝える、銀の悪魔が言う。


「これこそが、魔王城です」



****



 なぜそんなところにいるのかというと。


「……拠点を移せないかな」


 昨日。

 夜の空を飛び、王たちと共に菱台地の里に戻ったぼくは、今後どこに滞在するべきか悩んでいた。


「ここにいればいいの。ワタシがいればなにも不便はないの」


 リゾレラはそう言っていたが、できればそうしたくない事情があった。


「……どうも、見られてる気がするんだよな」


 確証はないが、おそらくこの勘は当たっていた。しかも日を追う毎に、監視の目は強くなっている気がする。

 そもそも神殿という権力を持つ組織のお膝元で、こそこそ話し合いをするなど無理があった。特に各種族の王族と魔王などという、誰もがその動向を気にする者たちであればなおさらだ。


「そうかもしれないけど……別に気にする必要はないの。聞かれて困る話をするわけでもないの」

「なんとなく嫌なんだよ。権力者連中に嗅ぎ回られるとろくなことにならない」


 神殿と関わりが深いであろうリゾレラは不満そうにしていたが、前世での経験があるぼくは譲る気になれなかった。


 と、その時。


「ん?」


 つんつんと、アトス王がぼくの腕を突っついてきた。

 それから、従者である銀の悪魔に耳打ちする。


「はい、はい……。『それならば、魔王城はいかがでしょう』と、王は仰せでございます」

「魔王城?」

「『前回の魔王が築き、居城としていた建物です。あそこならば住んでいる者はおりませんし、何より――――』」


 そこで銀の悪魔は、わずかに間を空けて言った。


「『魔王様のご滞在にふさわしいかと』と、王は仰せでございます」



****



 そうして翌日の午後。

 準備を整えたぼくたちは、さっそく魔王城へとやって来たのだった。


「え~、こんなところに泊まるの~? フィリ、廃墟なんていや!」

「まさか五百年前に建った廃城が今晩の宿とはの。まるで浮浪者のようじゃ。余の格も、ついにここまで落ちてしまったか……」


 不満たらたらのフィリ・ネア王とプルシェ王に、アトス王は少しムッとした様子で従者に耳打ちする。


「『かつての魔王城になんてことを言うのか。それに、ここは決して廃墟などではない』と、王は仰せでございます」


 その意味は、城に入ってすぐわかった。


「思ったより綺麗なんだな」


 埃も少なく、しかもあちこちに修繕された跡まである。

 明らかに人の手が入っているようだった。


「ここは、実は観光地でもあるのです」


 銀の悪魔が言う。

 アトス王に耳打ちされてはいないので、この従者自身の言葉であるようだった。


「旅の魔族が今でも時折訪れます。そのため、近くにある悪魔族の村の者が定期的に手入れしているのです。旅の者は必ずその村に滞在することになるので、魔王城へ訪れる者が増えれば、それだけ村が潤うということでしょう」

「うわぁ、すごい現金な理由……」


 魔族にとって歴史ある遺産だから……みたいなわけでは全然なかったらしい。

 フィリ・ネア王が瞳を輝かせる。


「へ~、ここ観光資源だったんだ! その村の人たち頭いいんだね! フィリ、そっちの方が気になる!」

「まあ……このくらいなら許容範囲かの」


 キョロキョロと城内を見回すプルシェ王も、どうやら機嫌を直したようだった。

 シギル王が、ヴィル王とガウス王に言う。


「おれ……実はけっこうわくわくしてるんだよね。非日常って感じでさ。お前らは?」

「オレもだ! 集落から外れていて兵もいない、警備もクソもない城だが、モンスターが襲ってきてもオレが守ってやるから心配するなよな!」

「僕、魔王城は一度自分の目で見てみたいと思っていたんだ。だから来られただけでも満足だよ」


 少年王らも楽しそうにしている。

 ぼくはふと、城の内装をじっと見つめるリゾレラに目を向けた。


「君も初めて来るのか?」


 リゾレラはぼくに向き直ると、首を横に振り、静かに答える。


「もう、何度も来ているの」

「ふうん。そうなのか」


 意外と旅好きなのかもしれない。

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