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第四話『総合科への編入』

「え~では、転入生を紹介する。入ってこい、アスカ」

「はい」


 教室の外で待たされていたカズキはその合図で扉に手をかけた。

 教室の入り口から室内を見渡す。

 個別の机ではなく教壇を囲むように軽いアーチを描いた長机とその椅子に腰掛けるクラスメイトの数はざっと見た限りでは30人もいない。

 だが、カズキはその生徒の数に一瞬圧倒されていた。


(やっぱり数が多いな……)


 カズキがこれまでいた『戦闘科』は多くても一学年10人ほど。全学年を合わせても30人といないのだ。

 だが『総合科』の生徒数はその『戦闘科』の三倍近く。

 その人数の差にカズキが気圧されるのも無理がない。


「どうした? 早くこい」

「あ、すみません」


 手招きする男性教師、イクス=ツヴェルクに促され、カズキは速歩で教壇にあがる。

 イクスが白いチョークを手に黒板にカズキの名前と所属を書き連ねる。


「コイツは今日付で『総合科』に配属されることになった『テスト魔導士』カズキ=アスカだ――」


 そう話を切り出したイクスをカズキは片目で盗み見る。

 逆立った白髪の髪に勝ち気な瞳。口調はどこか尖った印象で、体格はカズキより小柄な方ではあるが、整った顔立ちから一部のクラスメイト(特に女子から)に熱い視線を向けられていた。

 そのほとんどがイクスのファンなのだろう。

 小柄ではあるが男らしい口調に鋭い視線。まさに一匹狼のような印象が女子のハートに火をつけていることは間違いない。

 年齢もカズキたちとそう変わらないはずだ。確か十九歳だったはず。



 因みに――カズキはイクスの学生時代を知っている。

 去年入学したカズキの二年上の先輩が彼だったのだ。

 メンバーを組んで共に依頼を受けたこともあるカズキにしてみれば、今年学院を卒業したイクスがここで教鞭を振るっている姿をあまり現実として認識しづらい。

 今でも彼は教師ではなく頼れる先輩というイメージが強いのだ。

 その戦い方も、仲間思いな一面も好感が持てる。


「お――カ――おい、アスカ!」

「は、はい! なんですか先輩?」

「……俺は今お前の先輩じゃねえ。先生だ。話は聞いていただろ? 自己紹介しろ」

「自己紹介ですか……?」


 まったく話を聞いていなかったカズキは突然の無茶ぶりに面食らう。

 こういう時、何を言えばいいのかさっぱりわからない。

 別段面白いことを言えるわけでもないし、何か特殊な特技があるわけじゃない。


 それに、どことなくクラスの空気が重たいように感じる。

 クラス全員がカズキに対し、どこか遠慮したような雰囲気を滲ませているのだ。


(俺、何か不味いことでもしたのか……?)


 遠慮がちな空気に思わずカズキの気も滅入る。

 さっさと終わらせて教室の隅に座りたい気持ちが強くなった。


(――けど、第一印象は大切だ。変なことは言わずに無難に済ませよう)


 カズキは制服の乱れを正し、咳払いすると、


「カズキ=アスカです。よろしくお願いします」


 実に面白みのない自己紹介をした。


「おい、アスカそれだけか?」

「ええ、そうですけど?」


 呆れた表情を見せるイクスにカズキは首を傾げた。

 何か間違いがあったのだろうか?


「……まあ、いい。俺から言えるのは一言だけだ。お前ら、遠慮は一切するな。聞きたいことがあるヤツは放課後にでも聞け」


 イクスも教室の空気を敏感に感じ取ったのか、叱責するかの如く、声を張り上げた。

 それが、生徒の緊張をほぐしたのか、クラスメイトの視線が一変する。


「「「「「はいッ!」」」」」


 なぜかクラスの大半が元気よく挨拶したことにカズキは少なからず嫌な予感を覚えた。

 まるで聞きたいことが山積みでうずうずしているようなその雰囲気に、


「お、お手柔らかにお願いします」


 引きつった笑みを浮かべつつカズキは今一度教室内を見渡し、そこで彼女の姿を捉えた。


(……あ、あの子だ)


 トーカから見せてもらった写真と瓜二つの少女。


 イクスが吹雪のような白銀の白だとすれば彼女は純銀のような美しさを誇る銀髪のロングヘア。つり目気味でエメラルドグリーンのような翡翠の色を宿した瞳。

 全体的に色素が薄く、練乳のような肌にまるで計算されつくしたかのように整った容姿は写真で見るよりもより魅惑的だ。

 その表情は異端者であるカズキを見極めようとしているのかやや鋭い雰囲気。

 人を寄せ付けない野良猫のようなイメージを抱かせる少女は、けれどこのクラスの中でも断トツに可愛らしい。


(彼女がイノリ=ヴァレンタインさんか……)


 カズキは今一度彼女を視界におさめ、トーカから言い渡された条件を思い出す。

 イノリ=ヴァレンタインの《魔導器》を完成させること。

 それがカズキを『テスト魔導士』として『総合科』に席を置く条件で、それが満たされなければカズキも彼女も退学という目にあう。

 最低限の一般常識を身につけないと退学した後の未来がなくなるカズキにとってこの条件はなんとしてもクリアしなければならない。


 それに『総合科』なら魔導士以外の道も選べる。

 このクラスに居れば別に危険を冒してまで退学する必要がなくなるのだ。


(どうにかしてコンタクトをとらないと)


 何にせよまずそこから。

 話も出来ない間柄では専属の『テスト魔導士』になどなれるはずがない。

 話して、仲良くなってようやくそこから始められる。

 だから――


(まずは放課後。さりげなく話しかけてみよう)


 そう決意するカズキだった――


メインヒロイン登場です!!

どんな女の子かは、次回以降の更新で明らかになります!


次回の更新は今日か明日を予定しています!

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