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「あー満足した。 完成させてこよう…… 」

口笛を吹きながら台所へと戻っていった大之助の姿に由希はため息をこぼした。 やっと解放されたと息を吐きだしているとすみませんという声にお客様が来たのかと思わず顔を曇らせそうになる。

どんなお菓子を所望なのか振り返ったとき、なぜが甚一郎の両手を包みこむように握っている男の姿が。

黄桃のような色の翼をもったその男は目を輝かせると、甚一郎の頬に口づける。 その行動に由希は思わず声をあげてしまい、甚一郎は舌を打ってしまった。

「ここまで美しく素晴らしいメイドを見たことがない! 」

歓喜の声をもらす鼻息の荒い男に甚一郎が思わずうへぇと顔をゆがませる。 そんな甚一郎の頬に口づけ、手のひらに口づけた。

「俺、男だけどな」

「それはもちろんわかっています! あなたのような方を探していたんですよ! とても似合っています…… 撫で回したいくらいに」

店の中で翼をはためかせるために、店の中から物の落ちる音が響いた。 お菓子だけでもと避難させる由希をよそに男は甚一郎の太ももに触れる。

ぞくりと背筋が凍りそうなほどの嫌悪感に甚一郎は男の手を振りほどく。

それすらも男は可愛いと目を輝かせる。

「お名前は!? いやもう、僕と番になりませんか! 一生大事にしますよ」

「いや、遠慮するわ」

至って冷静に返した甚一郎に男はめげない。 逃げた甚一郎を羽交い締めにして口づける。

その光景を見ていていいものなのか? 自分の力じゃどうすることもできない由希は大之助を呼ぼうと一人で思いたつ。

「ちょっと待ってて、甚一郎さん」

台所まで走っていくと、完成と手を叩いている大之助の姿があった。 ケーキはどうやら完成したようで生クリームの塗られたケーキにイチゴが埋めつくされるように乗せられている。

「とても美味しそうですね」

思わず唾を飲み込んだ由希にそうでしょと大之助は笑った。

「もう箱に入れて完成だけど、どうしたの? 」

そばにあった箱にケーキを入れていく大之助の言葉に由希は店で行われているやりとりにああと声をもらす。

「甚一郎さんがなんか知らない妖怪に口説かれているんですけど…… 甚一郎さんは嫌がってるけど、向こうが強引で」

助けてほしいという由希に大之助はふうんと対して興味のなさそうに答えた。

ケーキを箱に入れ終わるとそばの台の上に置く。

「甚一郎さんが危ないんですってば」

「大丈夫でしょ、あいつがそんじゃそこらの妖怪にやられるわけないし」

裾をひっぱる由希に言うも納得しない由希は早くと大之助を急かす。

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