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「いやいや意味わかんない! 僕が着なきゃいけない理由はないですよ」

「大丈夫! お前がこれを着たらな…… 大之助が元気になる! 」

「兄弟喧嘩に僕を巻き込まないでください」

ため息をこぼす由希になんだとつまらなそうな甚一郎は店の中を片付けていく。 ある程度は由希が片付けてくれたため、片付けはすぐに終わった。

「そういえばチョコレートが今日のイチオシって言ってましたよね? 」

由希の問いかけに先程自分のしたかけ声のことを思い出した甚一郎はああと手を打った。

レジの横に置かれていた一粒の大きさのチョコレートを由希の手に乗せる。

「トリュフのようで表面は硬めだけど、中がしっとりしててすごく上手いんだ。 食べてみればいい」

味は保証する、と笑顔で語る甚一郎につられて由希はチョコレートを口に入れた。 ほんのりとココアのかかったカリカリとした表面としっとりした中身のチョコレートの美味しさに顔をほころばせる。

美味しいと語る由希の表情に甚一郎はしてやったりとにんまり笑った。 どういうことかわかっていなかった由希だったが、すぐにその笑みの理由に気づくことになる。

甚一郎は台所のほうに向かって

「いま由希がつまみ食いしてたぞー! 」

叫んだ。

「ずるいです! あんな風に渡されたらそりゃ口に入れますよ! 」

「由希もコスプレ追加ー」

台所から返ってきた大之助の返事に由希は声をつまらせた。 桃色のメイド服をもって近づく甚一郎に息を飲む。

「というわけだから、共倒れしような」

笑顔の甚一郎に由希はため息をこぼした。

いつ測ったのだろうかと怪しんでしまうほど、メイド服のサイズはぴったりだった。 ひらひらとしたスカートは下半身がひんやりとしてしまい、由希は思わず顔をしかめっつらにしてしまう。

自分はつけないくせにパンツを寄越してきた甚一郎に舌をだしつつ、なぜかつけるはめになってしまった由希。

よく女の人はこんなひらひらしたスカートを着ることが出来るなぁと由希が思っていると台所から大之助が戻ってくる。

その手にカメラを携えながら。

「由希がメイド服を着たと聞いて」

「来なくていいですから! ってかケーキは!? 」

「あとは生クリームを塗って、フルーツ乗せるくらいだから大丈夫」

あぐらを組ませた甚一郎の上に由希を乗せた大之助はそのままカメラをぱしゃり。 一度下ろしてぱしゃり。

ポーズを変えて、アングルを変えて何度もシャッター音をたてるカメラに由希はため息をこぼした。


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