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通り抜けたと同時に倒れた三つの獣たちの姿にふぅと息を吐きだした昂輝は由希をそばにおろした。
「誰が、俺が弱いといったか? 」
すれ違いざまに獣たちの急所に一発拳を叩きこんでいた。
「なにが起こったのか全然わからなかったです…… いつの間に」
「いるんだろ、雛菊! こんなことをしやがって…… 」
昂輝の言葉に隠れていた水色の着物を着た女性が姿を現した。 さきほど昂輝と話をしていた雛菊という女性は涙をこぼしながらゆっくりと昂輝たちの目の前にやってくる。
「お願いです、私と夫婦になってください」
由希を背に隠した昂輝は雛菊の瞳をはっきりと見つめて
「断る」
告げた。
「なぜですか! 私はあなたをとても愛しています! あなたに刻印を刻んだ方よりも! 」
雛菊の言葉にため息をこぼした昂輝は己の上着を脱ぎ捨てた。 先ほどとは変わり、はっきりとした黒い模様を浮かび上がらせる。 大きな翼を羽ばたかせた烏が雛菊を見下ろした。
その姿につばを飲みこむ雛菊。
「悪いが、大和以上に俺を愛する奴はいないさ」
それだけを告げると上着を拾い上げて、雛菊のそばをすり抜けた昂輝は由希の腕をひっぱっていく。
雛菊は呆然としており、ゆっくりと地面に腰を下ろした。 本当に放っていいのか考えるも歩みを止めない昂輝に置いていかれるわけにもいかず、由希はその場を後にした。
「あーあ、大和がくるじゃねぇか」
そうこぼした昂輝は由希を肩に抱えてその場から走りだした。 ため息をこぼした昂輝の頭の上からばさばさと激しく羽ばたく音が聞こえたとともに黒い男が降り立つ。
「こんなところにいたのか、昂輝」
「だから来るなっていっただろ」
「刻印がいきなり反応したから心配して探しにきたのに」
「嘘つけ、俺を探すために三つカラスを撒いてここに来たんだろうが」
うぐっと声をもらす大和にそれみろと昂輝は舌をだすと大和のそばをすり抜けて歩いていく。
「待てって昂輝」
そのあとを大和が追いかけてくる。 道の先には大之助が待っていた。




