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「由希、墓参りにいくぞ」
子どもたちにまみれてもみくちゃにされて疲れていた由希のもとへ昂輝がやってきた。
「えーもういっちゃうの? もっと遊ぼうよ」
口々に不満をもらす子どもたちの頭を撫でた昂輝は由希の手を引いていく。 墓は建物の裏口に置かれており、それはひっそりと存在していた。
周りには数本の木が植えられており、他に墓はひとつもない。
「ここには母さんしかいない。 俺がわがままを言っておいてもらったからな」
墓石の前に二輪の花が添えられており、昂輝はああと一人で納得した。
「あいつもきてくれたんだな」
「あいつって誰ですか? 」
「…… そういえば言ってなかったな、俺に兄妹がいてな。 兄貴はどこにいるか知らないが妹がいる」
みんな兄妹がいるのかと思うと少しうらやましいなと由希は口にださずに思った。
墓の前に腰をおろした昂輝は手を合わせた後、墓石に触れる。
「母さん、来たよ。 相変わらず元気にしてるから」
それだけを告げると昂輝は立ち上がった。 墓石の上の埃を手で払うとすぐに建物の中へと入っていく。 由希も墓に一度だけ手を合わせてすぐに後を追っていった。
「よし、遊ぶぞ! 」
昂輝の言葉に子どもたちがわぁと歓声をあげて群がった。 追いついた由希にも子どもたちが群がって、疲れていた由希の手をひっぱって遊びへと誘う。
視界の隅に水色の着物を着た女性が映った。 誰だろうかと由希が顔を向ける前に昂輝が由希の後頭部をひっぱる。
「あいつは気にするな」
昂輝の言葉に疑問を持ちつつも由希は子どもたちに向き直った。
「お兄ちゃんたちまたね! 」
昂輝と由希が解放されたのは日が落ちる寸前だった。 もうそろそろと腰をあげた昂輝に不満の声をもらした子どもたちにまた来るからと建物を後にする。
「またのお越しをお待ちしております」
ロボットに見送られて昂輝たちは建物を後にした。
「すごく疲れました…… 子どもたちはとてもパワフルでにぎやかですね」
「子どものいいところはそこだろ? ああやって笑って暮らせているのはとてもいいことじゃねぇか」
道の先に待たせている大之助のところまで歩みを進める。 がさりと草が揺れると昂輝は目を細めた。 由希をそばに引き寄せた昂輝の目の前に三つの獣の姿があった。
「こんなところで襲ってくるなんざ、いい度胸じゃねぇか」
昂輝が指を鳴らす。 獣は昂輝たちを捕えようと腕を伸ばしてくるも由希を肩に抱えた昂輝は三つの獣の間をすり抜けた。




