にゃーにゃーにゃー
今日の黒猫はご機嫌だった。
由希が店の掃除をしていたとき、ひたすらにゃーと鳴きながら由希の周りをぐるぐると回っている。
時折、由希と目が合うと口角をあげてにゃーと鳴く。 そして撫でてと言わんばかりに足に頭を擦りつけてくる。
その姿がまた可愛くてたまらない!
思わず手を止めて黒猫の相手をするために、仕事は全くはかどらなかった。
「黒猫」
離れてという意味で声をかけても、構ってもらえると思うのか余計に鳴くのだ。
頭を撫でて、奥に大之助の作ったお菓子をとりにいく。 その間も終始ついてくる。
「大之助さん、黒猫どうかしたんですか? ずっと僕のあとをついてきて」
台所でお菓子作りに勤しむ大之助の背中に由希は声をかけた。 由希の手に器を持たせて、その上に出来たてのお菓子を乗せていく。
「最近、色々とあって由希が構ってあげられなかったからじゃない? だから構ってほしいんだよ」
チーンというオーブンの音に焼けたと大之助は向かっていった。
とりあえず出来たものだけでも、と店に戻る由希に黒猫はついていく。
「そういえば最近、色々とあって黒猫と遊べてなかったかも」
刻印のことだったり大之助の兄妹たちだったりと、色々とゴタゴタしてたなぁと思い出す。
まだ出会う前までは大之助と黒猫と店を切り盛りしていたはずなのに。
「そういえばそうだったなぁ」
お菓子をそれぞれ並べたあとに腰を下ろした由希はレジのそばに置いている包み紙をがさりとひっぱってくると、黒猫をあぐらをかいた足の間に下ろした。
にゃーと鳴く黒猫を横目に手をきれいな布巾で吹いてお菓子を詰めこんでいく。
赤や青や黄といった明るい色にそれぞれ詰めこんでいると黒猫から撫でてと催促がくる。
「もうちょっと待って。 そしたらいっぱい撫でるから」
由希の言葉ににゃーと鳴く黒猫は体を丸くしてしまった。 大人しく待つようだ。
それを確認して包み紙にお菓子を詰めて、リボンをかけた。
「こんなものかなぁ…… 」
もう少し凝った方がいいかなと由希がうんとうなっていると影が覆いかぶさった。
いきなり視界が暗くなり、視線を上にあげるとそばに置いていた黄色の包み紙をもった一つ目の大柄の男が立っていた。
2メートルはあるだろうか。 男の身長にあたりをつけていた由希の手に包み紙を乗せた。




