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「腹減った…… 早くなにか食おうぜ」

「そうだな、なにも食べずにつれてきたからな」

 由希たちの耳に二人が去っていく音が聞こえた。 ばたりと閉じられた屋上の扉を見送ると由希はゆっくりと息を吐きだす。 辰美はなんでもないというように食べ終えたパンの袋を畳んでいた。

「なんかすごいものを見た気がする」

 お昼を食べる手を止めていた由希をちらりと辰美は見つめる。 驚いたと頬をほんのり赤く染めた由希の頬に辰美は口づけひとつ。

 びくりと肩を揺らした由希を面白いと辰美は何度も由希の頬に口づける。

「ちょっと、辰美ってば」

急な行動に由希は強く、辰美の顔を押した。 なんで?と瞳で語る親友の姿になにも答えずにいると腕を掴まれる。

「由希は、刻印が欲しいって思わない? 」

誰の?と聞かなくてもわかる。 まっすぐに見つめてくる親友の姿に。 思わず視線をそらすも顎をつかまれて視線を戻された。

「わからない」

由希は声を絞りだした。

親友の姿に深く息を吐きだした辰美は由希を解放する。 強くつかまれた体のあちこちがひりひりと痛み、体をさすった。

「俺、由希だったら大歓迎だけど」

それだけ。

それだけを答えて辰美は屋上の扉に手をかけた。 名を呼ぼうとするも辰美は困ったように笑みを浮かべて、先に屋上からでていく。

その姿を見送り、立てずにいた由希は空を見上げた。 雲ひとつないきれいな空だったが、由希の心はどんよりと雨が降り注いでいた。



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