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「お茶ありがとな… のども渇くのにこいつが離してくれないから」
疲れたとこぼしつつ、腰にしがみつく大之助の頭をなでた甚一郎は由希からお茶を受けとり口にする。
由希がやってきたことなど気にも止めていない大之助は甚一郎の腹に噛み跡を残し、ちろりと舌を這わせる。
くすぐったい、痛い。 声をもらす兄の姿を気にせずに。
「大之助さんはどうしたんですか? 」
由希の問いかけにあぁと甚一郎は声をもらした。
「発情期に入ってな… 一年に一度だけ俺から離れなくなる」
100年程前から始まった大之助のくせ。
きれいな男女、かわいい男女、色々といるなかで大之助はなぜか発情期に入ると己の兄を求めた。
発情期に入ると大之助はひたすら甚一郎を離さない。 甚一郎がなにか食べていようがトイレにいっていようが風呂に入っていようが。
急に始まる発情期に甚一郎は捕まる。
「なんで甚一郎さんに? 」
「さあな…… 俺がその場にいなかったら探しだしてくるし、全く離そうとしなくて大変」
「トイレのとき大変そうでしたね… 」
「最初のときは全く離れなくて、かといって離しかたもわからなくて何回か漏らしたことあるしな…… それこそ惨劇だった。 最終的に服を着てない時とかもあったし」
ため息をこぼした甚一郎に大変だなぁとどこか他人事のように由希は思っていた。 そんな話をしているにも関わらず大之助は甚一郎から離れようとしない。 由希と話す甚一郎のあごをつかみ、己の方へと向ける。
「大之助? 」
甚一郎の問いかけは大之助の唇に塞がれてなにも言えなくなった。 大之助を引き剥がそうとするも力では勝てず甚一郎はすぐに抵抗を止める。
目の前で行われる男たちの行為に由希は目が離せなくなり、気がつくとその光景を食い入るように見つめていた。
ちらりと見える2人の舌。 熱を帯びて絡み合うそれに視線を奪われる。
息苦しさに顔をしかめて離れようとした甚一郎を大之助は追う。
「あ、あの、僕は帰りますね」
思わず顔を赤らめた由希は帰ろうかと荷物をつかんだ。 由希の問いかけと共に唇を離した大之助。 ちらりと由希を見つめてすぐに甚一郎に視線を戻した。
何度も大之助の頭を叩いてひきはがした甚一郎は由希の名を呼ぶ。




