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ぷつりぷつり、と由希の制服のボタンを外していく。 声をあげようとした由希の口を己の手のひらで塞いだ。 否定の言葉は聞きたくない。 いま由希の手を外せば必ずあの男のところにいくに違いない。
辰美はひどく腹が立っていた。 渡してたまるか。
「由希、俺はお前を誰にも渡したくないんだ」
口を開く。 由希のものを同じもので塞ぐ。 息苦しそうに顔を歪めた姿など気にもとめずに。
由希の目を手で覆い隠して、深く抱きしめた。
目覚める。
いま己の腕の中で寝息をたてていた人の子が目覚めようと身を揺すっていた。 学校の近くにある木の上。 そこが辰美のお気に入りの場所。
誰の邪魔も入らない高い木の上。 由希の頭をなでて額に口づけ。
「ここは…… 」
目をこすり、由希が欠伸をこぼした。 目の前に親友の黄色の瞳が見えて由希は安堵の息をもらす。
自分たちのいる場所が学校の近くにある木の上だと知り、なぜこんなところにいるのだろうかと辰美に視線を戻した。
「おはよう、由希。 よく寝てたよ」
「僕ってなにをしてたんだっけ? 」
覚えていないと首をかしげる由希の姿に辰美は笑った。 辰美の腕の中から下りようとした由希だったが木の上だったことを思い出し、すぐに辰美の腕の中へと戻っていく。
「辰美、早くおろしてほしい」
「…… もうちょっとこうしていたいなぁ」
由希の頭をなでて、懐のふかくにしまいこむ。 苦しいともらした由希の声を無視して何度も何度も頭をなでて背中をなでる。
もうあんなことごめんだ。
辰美は思う。 由希が誰かに笑いかけて、楽しそうにしている姿を見るだけで辰美の心は締めつけられそうになる。 時が経つにつれて、由希が大きくなるにつれて欲が抑えられなくなっている。
「どうすればいいんだろ」
辰美は由希に聞こえないようにぽつりとつぶやいた。




