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「ここでのことを口外しないか? 」

 涙をこぼす大和の耳に低い声が響き渡る。

 顔をあげるとそこにはうろこを無数につけた赤い男。 

 愛しい者をその腕に抱いた男はもう一度、大和に問う。 その者の瞳の色が赤く染まっている。 その姿を見たことがない大和は気迫に圧倒されて見つめることしかできなかった。

 男は腕に抱えた愛しい者をそばにゆっくりと寝かせると大和たちのほうへ視線を戻す。

 手を二人に向けると昂輝の体は大和の腕からゆっくりと離れて男の前で止まった。 仰向けのまま宙に浮いている昂輝の姿にどういうことだと男に視線を向けた。

「昂輝は… 助かるのか… 」

 大和の声がかすれる。

 男の体を赤い炎が包みこむ。 

 次に現れた男は夕日よりも赤い髪を生やし、右腕に赤い龍の紋様が浮かび上がっている。 ゆったりとした赤い袴に上半身が裸の男は昂輝に触れる。

 昂輝の体は赤い炎に包まれていく。 

 まるで死者を送りだす炎のようで大和は息を飲んだ。 

 昂輝の体を燃やしてしまうのではないかと勘違いした大和が男を止めようとする前に、大和の前に昂輝の体が戻ってくる。

 ゆっくりと息継ぎを繰り返す昂輝の姿に大和は涙があふれた。

「あとは… 」

 男が指を動かすと昂輝の首周りの蒼い紋様が赤く染まった。

 ぱきんという音が響く。

 昂輝の首にあった紋様の弾けた音だった。 そこには紋様はおろか、自決するために爪をつきたてた昂輝の爪の跡もきれいさっぱり消え去っていた。

「傷跡も紋様も消し去りました。 あとはあなた次第です」

 大和が男へと視線を戻したとき、姿はすでにいつもの通りに戻っており、いつものようににこやかな笑顔をむける一人の少年が立っていた。

 腕の中に戻ってきた昂輝はゆっくりと息継ぎを繰り返し、寝息をこぼしていた。

 その姿にもう一度涙の溢れた大和はその体をゆっくりと抱きしめる。 

「ありがとう、辰美」

「いいえ。 これからですから、がんばってください。 そしてここでのことは内密に」

 昂輝を腕にがっしりと抱えた大和はゆっくりと辰美に頭を下げた。

「早くいってあげてください。 俺は由希を起こして帰りますので」

 翼を広げた大和は飛び立つ前に後ろを振り返った。

 辰美はというと先ほど下ろしていた由希をもう一度、抱えなおして頭をなでている。

「お前は何者なんだ? 」

 大和の問いに辰美はにこりと笑い、唇に手をあてる。

 が、瞳は笑っていない。 だた他言無用だと訴えていた。 

 その姿に大和は思わずごくりとつばを飲みこんでしまった。 聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がする。

 それ以上はなにも言わず、大和は昂輝を抱えて飛び立った。

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