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「いやぁ急に悪かったな。 和也が寂しいと泣くもんだから」
男の言葉に疑問が確信に変わる。
男はうんと一人うねり声をあげて、もう一度笑う。
由希は男の姿にぞくりと背筋に寒気が走った。
目に前で痛みに顔をしかめる少年がいるのにそちらのことなど目に入っていないのか、一人で話ながら一人で笑う男の姿に。
話の内容は和也に関することばかり。 なんとか手に入れた、とかなかなか懐かない、とか。
「和也さんは、どこにいるのですか? 」
由希の問いかけに男はにっこりと笑う。
「こことは違う場所に閉じ込めているさ。 あまりに抵抗したからいまはベッドに縛りつけて日に三度は抱いているぞ。 あいつの体は気持ちがいいからな」
うっとりとした表情を浮かべた男の頭の中には愛しい男の姿が思い浮かんでいるのだろう。
じゅるりとこぼれた男のよだれが頬を伝っていく。
いけねぇと男は手のひらでぬぐうと由希の頬に触れる。 頬に触れて、それは由希のあごをつかんだ。
「帰りたいとぼやくから誰か連れていこうとしてたら由希が思い浮かんでな。 よし、連れてこようと思って」
笑顔で男は答えた。
由希の表情がひきつったのがわかった男だったが気にすることなく由希の腕をつかむ。
嫌だと首を左右に振った由希を無理に立たせようとした。
顔では笑いながらも由希の腕を強く引く男に抗えない由希が立ち上がろう膝をつく。 と同時に後ろに引かれた。
痛みに顔を歪め、歯を食いしばりながら由希をとめる昂輝の姿。
「昂輝さん」
「そういえば予想外のがいたんだったな」
由希をそばに放り投げた男は痛みに顔を歪めたままの昂輝を見下ろした。
由希は渡さない。
口にはせずとも瞳で訴える昂輝の姿をしばらく見つめていた男だったが昂輝のあごをつかんだとき、あることに気がつく。
昂輝の口に親指を押しこむ。 こじ開けた中にある鋭い牙。
頭に触れる。 ぴょこりと主張する犬と同じ黒い耳。
昂輝のズボンに手を押しこむと小さいながらも主張するちいさなしっぽ。
「なるほど。 まさか犬神だったとは思わなかった。 人ほどではないが犬神も珍しいんだよなぁ」
「昂輝さんになにを」
「お前は黙っていろ」
由希が体を起こしたと同時に由希の体を蒼い炎が包みこんだ。 蒼い炎はまるで力をもったように由希が押しても壁のように固く二人のそばにはいけなかった。
そんな由希から視線を戻した男は痛みに喘ぐ昂輝の姿に唇を舐めた。
片方の手を隣へと向ける。 蒼い炎が集まり、渦を巻く。
今度はなにがでてくるのか。
蒼い炎は形を変えて長方形のものが出来上がる。 一体、あれは。
由希がつぶやきく前に男が昂輝をその上へと放り投げた。 そこに倒された昂輝は痛みにうめき声をもらし、右足に手を触れる昂輝をよそに男はその上へと身を乗りだしてくる。
まるでベッドのようなぎしりという音が昂輝の耳に入った。




