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 由希の口から暑いという言葉がこぼれた。

 ついこないだまで降り続いていた雨が止んだことにより、空から雲が流れてしまい太陽が姿を現していた。 じりじりと照りつける太陽の光は窓越しからでも由希の肌を焼くには十分な力を放っている。

 時刻は夕方。

 終礼が終わり、背伸びをした由希は荷物をまとめながら視線を辰美に向けた。

 辰美はというと

「今日は新しい新刊がでたから買いに行くんだ。 だから一緒に帰られないなぁ」

 残念だといいながらも楽しみにしている漫画が読めるからと駆け足で教室からでていった辰美を目で見送った。 生徒たちがみな一様に部活、遊び、帰宅と予定を決めて教室からでていく姿を眺めつつ荷物をまとめると同時にクラスメートのひぃっという短い悲鳴が由希の耳に入ってきた。

 荷物検査でもされたのだろうか?

 男子生徒たちがいかがわしい書物を持ってきていることがついこないだ発覚した。 それで教師たちも生徒たちの手荷物には敏感になっている。

 そのいかがわしい書物というのが人を襲うというもので、その話を聞いたとき由希は背筋が凍りつくような寒さに襲われて身震いしたのを覚えていた。

 それにしてもこんな時間に荷物検査だろうかと由希が荷物を持って教室から顔をだしたとき、その悲鳴の意味を知った。

「由希」

 そこには明らかに不機嫌だと顔を歪めながらも由希を求めてきた昂輝の姿があった。

 一年の間では常に不機嫌に顔を歪めている昂輝の姿を怖いと思っている者が多い。 由希もその一人である。 大和の知り合いでなければ近寄ることもしなかっただろう。

 由希の姿を見つけた昂輝は立ち止まっていた由希の腕をつかんで先を歩いていく。 引きずられながらも由希は後を追っていく。

「どうしたんですか、昂輝さん」

 由希の言葉に昂輝はため息をこぼす。

 靴を履き替える昂輝に置いていかれないように由希は履き替えて前で待つ昂輝に追いつく。

「大和に頼まれたんだよ。 今日はどうしても用事があっていけないから由希を大之助さんのところに連れていってほしいと」

 わざわざ頼まなくても。 

 由希は思わず口からこぼしそうになり、なんとか手でおさえた。 その姿に舌を打った昂輝。

 正直、由希を送る気など昂輝にはさらさらなかった。

 大和にどうしても、と頼まれて仕方なく、だ。 と己の心の中でつぶやきながら由希の腕を引きながら校門を抜けたとき、いつもはしないようなにおいが鼻をついた。


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