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「大之助さん、お疲れ様です」
由希の頭を撫でた大之助は欠伸をこぼす。
「助けていただき、ありがとうございました」
和也は眠そうに目をこする大之助に頭を下げた。
「別にいいよ。 扉を壊されても困るし」
欠伸をこぼし、由希の膝に頭を倒した大之助。
その姿を眺めていた和也だったが、由希の頬をなでて髪に顔を埋める。 突然のことに口を開いた由希をよそにしないと和也つぶやいた。
「彼は、あなたのではないのですね」
ぽつりとつぶやく。
その意味を理解していない由希にちらりとだけ視線を送った大之助はいいやと首を左右に振る。
「由希は別に誰のものでもない。 ここでアルバイトとして雇っているけども」
大之助の言葉に和也はなにかを考えこむともう一度、大之助に視線を送った。
「お願いがあります。 私に刻印を刻んでいただけませんか? 」
和也の言葉に大之助の雰囲気が変わった。
目を細めて和也という男をにらみつける大之助の姿に由希はごくりとつばを飲みこむ。 由希から体を起こした大之助は大きなため息をこぼすと和也の後頭部をつかみ、あと少しで唇が触れ合うというところまで近づく。
「断る」
吐き捨てた大之助は和也を解放すると由希を腕に抱えた。
「お願いします。 あなたほど力の強そうな方なら」
「あいにく、俺は神を敵にするつもりはない」
大之助の言葉に和也は息を飲んだ。
でていけ。
大之助はそれだけを言うと和也の背中を足で押した。 有無を言わさずでていけと言う大之助に和也は下唇を噛みしめる。
一人だけ話のわかっていない由希は首をかしげるばかり。
なにも言わずに頭を下げた和也はゆっくりと店の外へとでていく。 その姿を見送り、扉を閉めようとした大之助の肩を由希は叩いた。
「放してください、大之助さん。 どういうことですか刻印って、それに神ってなんのこと」
扉を閉めながら大之助は由希を見つめる。
大之助が口を開いたと同時に悲鳴が響き渡った。
「なんですか、いまの」
響き渡った悲鳴の主が誰なのか、はっきりとわかった由希は外にでようとするも大之助に止められた。
「助けなきゃ」
由希の言葉に大之助はため息をこぼしつつ、由希を抱えたまま店の外へとでた。
「たぶん、いまから見る光景を見れば知りたい答えがすべてわかるよ」
大之助の言葉に由希はゆっくりとうなずいた。




